急な時短要請にメディアからのバッシング……。追い込まれた飲食店は「お客さんだけが支え」

ランチメニューでロスを最小限に

 このように国や自治体からの援助は一定の効果をあげてはいるものの、それがすべての飲食店に当てはまるわけではない。立地や従業員の数によって、その効果には大きく差が出ているのが現状だ。  去年に比べて売り上げが「10%もいかない」と苦しい胸中を吐露するのは、池袋東口「バッカス」の樋口昌純氏。 「うちはお酒がメインでサラリーマンのお客さんが多いのですが、今はテレワークが普及して、そもそも街を人が歩いていません。そんな状況に少しでも対応するため、ランチメニューも始めましたが、会社から『お昼も外に出ないでください』と通達されている方もいます」 「ランチメニューで再起をはかる飲食店」というと聞こえはいいが、お店を存続させるため、毎日が熾烈な戦いだ。 「時短要請の協力金を一日6万円ぶんいただいていますが、その日に振り込まれるわけではないので、少しでも現金収入を上げていかないと維持できません。ロスを出したくないので、ランチメニューは基本的にいつも扱っているものプラス・アルファという感じですね。止むを得ずやっているというのが本音です」  こうした苦肉の策は収入を確保するためだけに行っているわけではない。樋口氏の口ぶりからは、老舗居酒屋店主の意地が伝わる。 「お客さんを入れるために頑張っているんです。お客さんが来ないことには心が折れてしまうので。支援してくれる人たちの声に応えたいと、ファイティング・ポーズをとっています。支えはそれだけですよ。 『アフター・コロナ』なんて言いますけど、今さら完全に元に戻るとは思っていません。うちの100%は戻らないですし、ワクチンもいつもらえるのかわかりません。気温が下がったら、また感染者が増えるでしょうし、元に戻るのは10年、20年先でしょうね」

疑問が浮かぶ「人とカネ」の使い道

 協力・支援金については、「いただいたお金がなかったら潰れている」としながらも、多くの疑問を感じているという。 「足りているかといえば足りていないですし、一律給付は厳しいですよ。税務署は売り上げも把握しているわけですし、そういうデータを引っ張ってこれないのかと思ってしまいます。何のために手間暇かけて確定申告しているのかと。  また、協力金などの申請書類についても、手数料印紙代がかかりますし、高齢の店主ならプリンターなども買わなければいけません。自治体によっては無料で発行してくれたり、自動販売機もありますが、なかには狭い窓口に職員さんがいるところもあります。それにも人件費がかかるわけで……」  自らの従業員は泣く泣く切らなければいけないのに、支援を求める役所では紙を渡すのにも人員が配置されている……。そんな矛盾した気持ちは、「闇営業」をしている店にも感じるという。 「20時にお店を閉めて街を歩いていても、やっぱり営業している店があるわけです。そこに人が入れきれないほどいる……。腹立たしいとは思いませんけど、切ないですよ。協力しますというステッカーが貼ってあるのに、それを掲げながら密を作って営業するのかと。  ただ、そういうお店も経営状態や従業員の数はわからないので。結局はお客さんの選択ですよね。19時過ぎに来店された方にお酒が出せないことを伝えると、『じゃあ、いいや』と帰られてしまう。コロナの前から満席でお帰りいただくことだって苦しかったんです。わざわざ選んで来てくれた方に『ごめんなさい』と伝えるのは申し訳ないですよ」
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暗中模索のツケを回される飲食店
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