同僚が次々と鬱でダウンするなか、上司は見て見ぬ振り。メンタルヘルス・パンデミックに晒される30代の胸中

 女性や子どもを中心に増加する「コロナ鬱」。経済状況の悪化や自宅で過ごす時間が増加したことで、コロナショック以前から困窮していた層の問題が浮き彫りになっている。だが、苦境に立たされているのは彼らだけではない。働き盛りの30代の間でもメンタルヘルスは深刻な問題だ。

出社日数に反比例して仕事は増大

メンタルヘルスのイメージ画像

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同僚が次々と鬱病で抜けていく」と諦めにも近い声を絞り出したのは、小売チェーンで働くNさん(男性・34歳)だ。 「うちの会社の場合は元々体質的に古かったのが、コロナで一気に表面化した感じですね。仕事は相変わらずで、安月給の割にプレッシャーが多く、うちのグループではここ半年で3〜4人ほど鬱になっています」  テレワークの導入などで業務形態が変化するなか、仕事は緩和されるどころか、むしろ多忙を極めているという。 「コロナの影響で出社日数は半分になりましたが、やること・求められることは前と一緒。だから、結局休みの日に仕事をしたり、コロナのせいでイレギュラーな仕事が増えています。人が辞めても代わりの人員はなくそのままで、結果一人にかかる比重が重くなっているんです。それでも会社は変わらないし、鬱で人が休んでも、そのぶん雑費が浮いてよかったぐらいに思っているんじゃないですかね……」  社会が変化するいっぽうで、会社は旧態然としたまま。同僚や部下が倒れるなか、上司は相変わらず……。そんなギャップから生じる業務やストレスが、30代の労働者を直撃しているというわけだ。 「うちの会社の場合、最初は交代で勤務して、なるべく関わる人数を少なくしようという感じだったんです。ところが、結局上の人たちが通常勤務のままなので、提出物や指示出しなどは以前と変わらず。休みの日でも連絡や提出物などがあり、常に仕事の毎日になってしまいました。そんな業務に耐えきれず、鬱に……。業種もそうですが、世代間のギャップも関係していると思います」  日本経済が下降し、ただでさえストレスの多かった日々が、コロナの影響で地獄に。そんな現状にも、上司たちはピンときていない状況だと、Nさんは話す。 「仕事の内容やり方を議論に上げて変えようとはせずに、『代わりの人は誰がいいか』とか、『代わりに提出物を出すのは誰か』と、そういうことしか話していないんです。同世代の空気的には『また病院出たか』『大丈夫かな』と、みんなお互い心配してはいますが、上が変わらないことにはどうしようもないのが現状です」

上司の「コロナ隠し」に悩む日々

 こういった世代間のギャップの苦しんでいるのは、小売業だけではない。世間からの厳しいバッシングを浴び続けている飲食業でも、30代は同じような問題に直面している。都内のバーで働くSさん(女性・31歳)は、驚愕の事態に遭遇したという。 「上司がコロナにかかったんですが、従業員やお客さんのケアよりも、どうやって隠すかを気にしていたのにはゾッとしました。結局、お店自体が休業したのですが、お客さんへのアナウンスは特になし。上は以前から『コロナなんて大したことない』と言い続けていたので、こちらからしっかり対応しようと言い出すのも気まずい雰囲気でした」  たとえ「正論」であっても、上司や周囲の目が気になって自分の意見を主張できない。なんとなく周りの空気に合わせてしまう。ストレスに包まれながらも、立場的に強く言えないというのも、30代が追い込まれる原因なのかもしれない。 「後輩がいる手前、もっと安心して働けるようにしたかったんですが、上司からは『とりあえず休業中は家にいろ』の一言だけで、ほかの従業員が検査を受けたのかもわかりません」  まともに考えれば、従業員や顧客の安全が第一であるとわかりそうなものだが、そういった点でもギャップを感じたという。 「お店が閉まっている間は売り上げが完全に消滅して、正直私も生活は厳しいです。だから、なんとか存続させたいという気持ちはわかるんですが、そのベクトルが間違った方向に向いている気がします。自宅で待機している間は、自分もかかってしまったんじゃないか、誰かにうつしてしまったんじゃないかと、気が気じゃありませんでした。ところが営業が再開すると、上司は『お客さんが楽しめる空間にしよう』と、コロナのことはまるで触れず。何もなかったかのように振舞っていたので、なおさら気が滅入りましたね」
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世代間で板ばさみとなる30代のビジネスパーソン
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