収賄事件で辞職した吉川元農水大臣の北海道2区補選で、菅政権は本当に候補擁立を断念したのか!?

これは野党分断工作か? 自民党は早々と候補擁立断念を表明

1月16日の市民団体主催の街宣に参加した、松木謙公候補(左・立民)と平岡大輔候補(右・共産)

1月16日の市民団体主催の街宣に参加した、松木謙公候補(左・立民)と平岡大介候補(右・共産)。北海道2区補選での野党統一候補擁立に向けた動きが本格化をし始めた時に、自民党は候補擁立断念を発表

 だが、こうした真相解明に対して農水官僚は消極的だった。国際基準の修正についても野党議員が「吉川大臣と相談しながらやっていたのか」と聞いても、農水官僚は「コメントは控える」と回答を拒み、政策決定過程を示す文書の開示についてもことごとく拒否した。  安倍政権時代の森友・加計・桜を見る会での対応と同じように、菅政権も疑惑隠しの姿勢に徹し続けた。スキャンダルを闇に葬り去る隠蔽体質も、安倍政権から継承したといえるのだ。 「臭いものに蓋をする」という菅政権の隠蔽体質は、吉川氏の辞職に伴う「北海道2区補選」(4月25日投開票)でもハッキリと現れた。自民党の山口泰明選対委員長は15日、菅首相との面談で候補擁立断念を決めたことを明らかにした。 「政治とカネ」が争点となるのが確実な補選を「不戦敗」にすることで、吉川氏の収賄事件が早く忘れ去られ、菅政権への打撃を少なくしようとする魂胆が見え見えなのだ。  これは野党分断工作も兼ねた“変化球”でもあった。北海道2区では過去2回、野党2候補の合計得票数が、2連勝した吉川氏の得票数を上回っていた。野党候補一本化で「1対1」の構図に持ち込んでいれば、勝敗が逆転していた可能性は高かったのだ。  その教訓から今回は野党統一候補擁立の気運が高まり、1月16日の市民団体主催の共同街宣と19日の討論会に両候補が参加したプロセスを経て、最終決定しようとする動きが始まろうとしていた。こうした野党と市民の連携(候補者調整)に冷や水を浴びせるかのようなタイミングで、自民党本部は候補擁立断念を発表した。

直前に“隠れ自民候補”が登場する可能性も

1月16日、北海道2区補選での野党統一候補擁立を目指す市民団体主催の街宣が札幌市内で開催された

1月16日、北海道2区補選での野党統一候補擁立を目指す市民団体主催の街宣が札幌市内で開催された。立憲民主党道連代表の逢坂誠二衆院議員らがマイクを握り、立憲民主党の松木謙公候補と共産党の平岡大介候補も参加した

 しかし逢坂誠二・立民道連代表16日の街宣後、囲み取材で「『一強』と呼ばれる与党が戦わずして敵前逃亡をした印象」と驚く一方で、「選挙は何が起こるか分からないので、万全の構えで臨んでいきたい」と統一候補擁立を進める考えに変わりはないことを明らかにしたのだ。  筆者が確認の意味で「『何が起こるか分からない』というのは、例えば無所属の保守系候補が出て自民党が応援するとか、維新の候補を自民党が応援することもありうるので、野党統一候補擁立が(必要だということですか)」と聞くと、逢坂代表はこう答えた。 「さまざまなことを想定しておかないと、選挙は何がきるのか分からない。特に最近の選挙は直前になって候補が出てくることがあるので、そうなった時に『準備が間に合いませんでした』では元の子もない。その意味では野党が大きな塊になっているのが、大の大の基本だと思う」  野党統一候補擁立の調整を今まで通り進めることを明言した逢坂代表だが、道政ウォッチャーも同じような見方をしていた。 「かつて中曽根政権は『死んだふり解散』で圧勝しましたが、今回も菅政権が“死んだふり擁立”、つまり直前になって“隠れ自民候補”を出してくる可能性は十分にある。その場合は、北海道知事選で“菅チルドレン知事”の誕生に選対幹部として貢献した、ニトリの似鳥昭雄会長が再びキーマンになるでしょう。 『政治色が薄い経済人を担ぎ出す』という極秘シナリオが、菅首相と懇意な選挙プランナーの三浦博史氏らが練っていても不思議ではない。鈴木知事誕生に関わった“チーム菅”が再結集するというわけです」  自民党の候補擁立断念は第一幕にすぎず、波乱の第2幕が控えているという見方だ。表舞台での答弁能力は貧弱でも、水面下での裏工作は得意な菅首相が今後、北海道2区補選で何も仕掛けないとは考えにくい。一方、変化球を投げ込まれた野党が統一候補擁立をすんなり実現して、万全の態勢を築くことできるのか。北海道2区補選から目が離せない。 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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