言語学やフェミニズム、検閲や放送コードの歴史、映画や音楽、そしてニコラス・ケイジ……。こう聞いて、読者の皆さんはどんな配信シリーズを思い浮かべるだろう?
こうしたいくつかの要素を見て、「
なんだか真面目そうなシリーズだな……」と感じる人は少なくないだろう。では、これらすべてが「
FUCK」や「
SHIT」といった「
卑語」を巡るものだとしたら?
我々、日本人も映画や音楽を通して耳に馴染みのある
罵り言葉だが、その
成り立ちや
卑語として使われるようになった経緯まで知っているという人は、そう多くないはずだ。
そんな知られざる卑語について、
学術的な側面からポップ・カルチャーへの影響までを網羅するのが、
ネットフリックスで配信中の『
あなたの知らない卑語の歴史』だ。
同シリーズで取り上げられる卑語の数々は『
聖書』に登場するものから、
最新のヒット曲で流れるものまでさまざま。そのどれもが意外な、そして
思わず笑いが漏れるような背景を持っている。何より興味深いのは、冒頭で紹介したような
多様なキーワードから、その歴史を紐解いていくという部分だ。
<ポップ・カルチャー>
たとえば、
映画や
音楽。シリーズ中では、各エピソードで紹介される卑語が用いられた
映画の場面や楽曲が効果的に挿入されており、こうした
ポップ・カルチャーに興味のある人ならば、
その一点だけで十分に楽しむことができる。
同シリーズでは
言語学者などの専門家から、
人気コメディアンなども出演しており、
大真面目に卑語が検証されるのだが、合間にそういった「サンプリング」が入ることで、
堅苦しい雰囲気なくして壮大な歴史を振り返ることができるのがポイントだ。
「
もっとも多く『FUCK』を使った俳優は?」といったクイズが突然始まるなど、
各エピソードは20分程度ながら
情報量と
エンタメ性に溢れている。
<検閲や放送コード>
こうしたポップ・カルチャーでの卑語の歴史とは、
検閲や放送コードの歴史でもある。日常生活ではもはや当たり前のように使われる卑語でも、大スクリーンに映し出された映画やラジオを通して耳にする音楽で触れるのとでは、
まるでその意味合いは変わってくる。
言葉が生まれ、長い歴史を通して卑語としての意味合いが強くなるにつれて、
政府や映画・音楽産業は公に「タブー」を設定してきたのだ。
「
作中で『FUCK』を使っていいのは一度まで」など、
意外な基準を学べるのも、同シリーズの魅力。
卑語の歴史とは、抵抗と解放の歴史でもあるのだとあらためて痛感させられた。