始まった「ワクチン格差」。“上級国民”による順番無視の優先接種に社会的批判が高まる。スペインで

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ワクチン接種で特権を利用して優先順位を飛び越さんとする政治家たち

 2020年12月27日からスペインでも最初にファイザー社のコロナワクチンの接種が実施されたのであるが、政治家らが特権を利用してワクチン接種の優先順位を飛び越えて先にワクチン接種を受けていたのが問題になっている。  スペインでは、ワクチンを受ける優先順位は、まず老人ホームの高齢者、老人ホームに勤務している介護士、病院でコロナ患者を第一線で臨床している医療従事者と言った順番でワクチンが接種されることになっている。その後に70歳以上の高齢者といった具合いで8月には国民の70%がワクチン接種を済ませているというのが政府の計画だ。しかし、現状のスピードの遅い接種の展開とワクチンが不足し始めている現状では政府の計画が達成されることはほぼ困難であろうと見られている。  このような現状を前にしてスペイン各地で特権を利用して先にワクチンの接種を受けている人がいることに社会で強い批判を浴びている。特権を利用し、我先にと接種をする人種……特に政治家の間でそうした人間が多く見られている。

続々発覚する政治家や役人の「優先的接種」

 先ず最初に筆者が在住しているバレンシア州では、老人ホームに入居している高齢者の家族までもが一緒にそこでワクチン接種を受けたというケースがあった。それだけでも優先順位の決まりを崩すものだが、更に驚くのは老人ホームが所在している自治体の首長と夫人までがそこで一緒にワクチン接種を受けていたという事実があったことだ。  また、バレンシア市からバルセロナの方に15キロ離れたラフェルブニョル市では市長のフランシスコ・ロペスも、ファイザーのワクチンをスペインで接種が開始された初日の12月27日に接種を受けた。彼は誰よりも先に接種を受けた理由として「模範を示す為だった」と述べている。ワクチン接種を敬遠しようとしている人を意識して彼らを前にワクチン接種は恐れるには及ばいないということを伝えたかったのであろうが、世間からの批判の前に最後は謝罪している。バレンシア州知事のチモ・プッチュは特権を利用して接種を受ける順番を無視したこのロペス市長に対してファイザーの2回目の接種を受けることができないように指示した。  バレンシア州アリカンテ県オリウエラ市では、同市の健康福祉局長ホセ・ガリアノが1月18日に接種を受ける順番ではないのに受けていたことが発覚した。批判の的になった彼は「ワクチンが2-3本余っていたから利用させてもらった」と回答した。またアリカンテ県ラ・ヌシアの市長も優先的にワクチン接種を受けた。彼はその理由として、サッカーの地方2軍の担当医だということで医療従事者という名目で接種を受けたと説明した。
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「上級国民」たちの順番飛び越し
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