それよりも私が最もおすすめしたいのは、
座禅的な呼吸法を行うことで
リラックスする以上の効果を得ることができるというものだ。
麓 正樹氏の研究によると、座禅で行われている呼吸法「
腹筋を意識した腹式呼吸で6〜8秒で吸い、9〜12秒で吐く」ことを20分間実践することで、
リラックス状態のときに出るα波が出現することを発見した。この
α波は、不安を減らし活気ある心理状態になっているときに出るものだった。
また、
前頭前野という作業記憶や、注意、意欲などの機能を担う場所の
血流が徐々に増えることも発見された。意識的に呼吸をコントロールすることで、
リラックスしつつも集中している、高いパフォーマンスを発揮するのにベストな状態を作ることが可能なのだ。
α波が出ている状態は頭のなかがクリアな状態なので、
論理的な思考をするのに最適な状態でもある。まさに、「
禅の呼吸 壱ノ型 超集中」だ。
たとえば
大事なプレゼンの前や、
集中力が必要なプログラミングをする前など、高い集中力が必要な作業をするときはすぐに作業に取りかからずに、20分ではなくとも、
少なくとも5分以上は座禅で行われている呼吸法を実践することで、集中するために
万全の状態を作ることができる。
氏の実験では、上記の呼吸法を5分行なったあとからα波が出現し、その後、α波の出現頻度は増大することがわかっている。
Apple watchには「呼吸」という意識的な呼吸をサポートするアプリが入っているので、それを活用するのもよいだろう。
普段、無意識に行なっている呼吸だが、
意識的に行うことでさまざまな効果がある。ぜひ、仕事のワンシーンで呼吸法を取り入れてみてはいかがだろうか。
【参考文献】
『呼吸の随意的瞬時統制が反応時間と 状態不安に及ぼす影響』大石武信、時田 学、山岡 淳
『剣道と呼吸相』堀山健治、白藤一郎、坪内伸司、林 郁夫、浜口雅行
『女子大生生徒を対象としたストレスコーピングに関する研究』伊達萬里子、伊達幸博、高橋和歌子ほか
『スムーズな動作につながる呼吸法と力の抜き方』麓 正樹
<取材・文/山本マサヤ>