1月7日の総理記者会見を見て抱いた「2つの違和感」と「ある疑念」

1月7日、緊急事態宣言発令に伴う総理会見

 緊急事態宣言発令日、官邸で行われた総理記者会見2021年1月7日、1都3県への緊急事態宣言発出にあたって菅義偉総理は記者会見を実施した。だが、3日前の年頭記者会見と同様、菅総理は質問とは異なる的外れな内容を回答することが多い上、記者は1人1問に制限されて再質問は許されなかった。 〈*3日前(1月4日)の年頭記者会見の詳細は過去記事「要領を得ない回答、厳重な質問統制……。それこそ「緊急事態」だった菅総理の年頭記者会見」を参照〉  3日前の会見と異なった点としては、感染症対策に関する質問の回答は同席した新型コロナウイルス分科会・尾身茂会長にほとんど丸投げする場面が度々見受けられた。だが、尾身会長も記者の質問に正面から回答することは少なかった。  つまり、この記者会見の質疑において菅総理と尾身会長の回答から得られた新たな情報ははっきり言って皆無だった。聞くだけ時間の無駄と言って差し支えない。一方、記者の質問内容と司会(山田真貴子 内閣広報官)の進行については、個人的には注目に値する気づきがあった。まず、質問が許された全11名の記者の質問内容と司会者が指名する際の発言内容を整理すると、下表のようになる。 gaiyou〈*全11名の記者の質問内容と司会進行の全文は筆者のnote「【文字起こし】菅義偉総理 記者会見2021年1月7日(緊急事態宣言 発出)」参照〉〈*菅総理と尾身会長の回答内容も含む概要は首相官邸Webサイトを参照

質問が許された11人の記者の質問内容と司会者の発言

 質問が許された全11名の記者の質問内容と司会者が指名する際の発言内容を整理して書き起こしたのがこちらだ。 <1人目 日本経済新聞 重田記者> 指名前の司会者発言:「最初は慣例に従いまして幹事社2社から質問を頂きます」 質問の要約:1ヶ月間で制限の解除が可能か、感染が収まらなかった場合の対象・期間・地域の拡大、緊急事態宣言による経済への影響の想定 <2人目 テレビ東京 篠原記者> 指名前の司会者発言:「幹事社の方、もう1社。お願いします」 質問の要約:前回の緊急事態宣言時のような一律給付金を検討するか、医療従事者の報酬の改善を検討するか、緊急事態宣言で想定される財政支出の規模 <3人目 共同通信 吉浦記者> 指名前の司会者発言:「ここからは幹事社以外の皆様から質問を頂きたいと思います」 質問の要約:PCR検査を大幅に拡充して感染状況を正確に把握する必要性 <4人目 フジテレビ 鹿嶋記者> 指名前の司会者発言:「次のご質問にいきたいと思います」 質問の要約:東京以外の緊急事態宣言の必要性、緊急事態宣言を延長する場合の期間 <5人目 ロイター通信 タケナカ記者> 指名前の司会者発言:「次は、外国プレスなどの方からもご質問頂きたいと思います」 質問の要約:東京五輪開催の可否 <6人目 中国新聞 下久保記者> 指名前の司会者発言:「内閣記者会の方からの質問を頂きたいと思います」 質問の要約:核兵器禁止条約への方針、締約国会議へのオブザーバ参加の可能性 <7人目 毎日新聞 笈田記者> 指名前の司会者発言:「次のご質問にいきたいと思います」 質問の要約:映画館やパチンコ店は短縮要請ではなく働きかけに留めた理由 <8人目 ドワンゴ 七尾記者> 指名前の司会者発言:「内閣記者会以外の方からの質問も頂きたいと思います」 質問の要約:分科会を始めとする知見を政府のもとで掲げる必要性*質問中に「連日お疲れ様です」「第1波の時、専門家会議が接触8割減という具体的な数値目標を立て、奇跡的だと思うんですが、かなり実現できた」の発言あり <9人目 京都新聞 国貞記者> 指名前の司会者発言:「今度は、内閣記者会の方からのご質問を頂きたいと思います。」 質問の要約:大阪や愛知の緊急事態宣言検討に知事要請は考慮するか、大阪は京都や兵庫と一体的に発出を検討するか <10人目 ラジオ日本 伊藤記者> 指名前の司会者発言:「それでは、内閣記者会以外の質問を頂きます。」 質問の要約:緊急事態宣言発出に当たって憲法の壁を感じるか <11人目 テレビ朝日 吉野記者> 指名前の司会者発言:「次の日程の関係がございますので、最後の質問にさせて頂きたいと思います。」 質問の要約:持続化給付金の第2弾を検討するか  以上が全11名の質問の要約と、指名前の司会者発言である。
次のページ
筆者が抱いた「違和感」と「疑念」
1
2
3