菅義偉首相は、総理大臣就任後の所信表明演説で2050年までの日本の脱炭素化を宣言した。つまり、コスタリカとターゲットイヤーは同じだ。ただ、日本の場合、その詳細や実現可能性に関する議論はこれからといっていい。
脱炭素化を議論する際に、日本では短期的なコスト面が強調されがちなきらいがないだろうか。長期的視点で展望を描いたPNDと、そのベネフィットに着目したBIDのレポートから私たちが学べることは、なによりも
「この人類史上類を見ない危機的な状況を、いかに前向きに乗り切るか」という態度だろう。
PNDが策定された前提として、2015年に締結されたパリ協定を抜きには語れない。その歴史的合意の立役者となった当時の国連気候変動枠組条約締結国会議事務局長のクリスティアーナ・フィゲーレス氏は、
オプティミズム(直訳だと「楽観主義」だが、この場合より正確には
「成功の可能性を信じること」という意味合いになる)を最重要キーワードとして掲げている。
氏は、コスタリカにおける軍隊の廃止を宣言したホセ・フィゲーレス氏の娘だ。つまり、
「コスタリカ的オプティミズム」を最も色濃く受け継いでいる人物といえる。PNDにも、それを評価したBIDのレポートにも、その意味でのオプティミズムを感じることができる。私たちがまず参考にすべきは、その態度ではないだろうか。
また、BIDによるこの調査研究は、
PNDを他国の脱炭素化計画立案・実行において、より応用しやすいサンプルとして活用されることも意識されている。もちろんコスタリカの例が日本に適用できるわけではないが、参考になるヒントはある。
実際の応用はそう簡単ではないが、日本の政策立案担当者や経済界のリーダーたちにもぜひこのレポートを一読し、それこそオプティミズムの立場にたって、何らかのヒントを発見してもらいたい。
【「持続可能国家」コスタリカ】
<文・写真/足立力也>