「古い価値観」だけじゃない。明石家さんまの言葉に秘められた幸福追求の真理

 「後悔しても、またそれがええねん。後悔が楽しいねんな」ーー。  これは、明石家さんまさんが’15年、『ヤングタウン土曜日』(毎日放送)というラジオ番組で元モーニング娘。の鞘師里保さんに送った言葉だ。実はこの番組が放送されたのは、鞘師さんがモーニング娘。の卒業を発表した翌日だった。

「後悔しない生き方」に潜むリスク

孤独な様子のイメージ画像

photo via Pexels

 筆者がこの言葉を知ったときに「さすが、明石家さんまさん!」と思ったのは、この言葉には幸福追求に関する真理が隠れているからだ。  カリフォルニア大学のアイリス・モースの調査によると、人は「幸福を追求することが大事だ」と考える人のほうが、そうでない人よりも寂しさを感じることが多いということがわかっている。  調査では、参加者の半数に幸福の利点に関する偽の新聞記事を読ませて、幸福の重要性を印象づけた。その結果、記事を読んだ人は読まなかった人よりも強い孤独感を感じていることがわかった。  このように、「後悔しないように生きよう!」と思うことは人生に対する強いコミットメントになるかもしれないが、逆に将来に対する不安や寂しさを強く感じてしまうかもしれない。  世の中には『後悔しない人生の送り方』のような本も出ているが、後悔のない幸福な人生を追求することは、逆に幸福になれない人生になってしまう可能性があるのだ。

幸せを求めるには「ホールネス」が有効

 では、幸福を求める場合には、どうすればいいのか。そのヒントが、「ホールネス」だ。  ポジティブ心理学などで有名なジョージ・メイソン大学のトッド・カシュダン教授は、「ネガティブな感情になることや、嫌な人と接することは避けられない。苦悩の少ない人生が健全ではない。幸福度を高めよう努力するよりも、ポジティブもネガティブも含めた広範囲の心理状態を受け入れる能力を見つけて、それを力に人生の出来事に効果的に対応することのほうが大事。その状態が『ホールネス』だ」と語っている。  これは、ネガティブなことをポジティブに変換することを推奨しているわけではなく、ネガティブなこともポジティブなことも、ありのままに受け入れることが重要だということだ。
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コロナショックが続く時期にこそ受け入れたい「後悔」
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