不誠実答弁を可視化してきた男が衝撃を受けた、2020年の国会答弁5選

赤信号

かめらん / PIXTA(ピクスタ)

 新年を迎えたからこそ、今再び2020年の国会答弁を振り返りたい。年間を通じて国会答弁を文字起こしし、「信号無視話法分析」として、不誠実答弁を可視化する記事を書いてきた筆者の独断で答弁を聞いた際に衝撃を受けた度合いが強かった5点を選んだ結果、新型コロナウイルス対応、検察庁法改正、日本学術会議など今年の国会で大きな注目を集めたテーマにおいて、突如として過去の議論や答弁を根底からひっくり返した衝撃的な答弁が多く並んだ。 〈*各答弁の動画リンクが表示されない配信先で本記事を読んでいる場合、動画は筆者のyoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できます〉

「4日間ルール」の責任逃れ。誤解した国民のせい!?

第1位「37.5度4日は検査要件ではなく、受診の目安」加藤勝信厚生労働大臣(当時)  個人的なダントツ1位は、今年4月の緊急事態宣言の最中、国民に衝撃と怒りを与えた答弁。厚労省は2020年2月17日に新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安として「37.5度以上の発熱が4日以上続く」というルールを発表していた。  これによって、4日間の自宅待機中に容態が悪化して亡くなるケースが相次いだ。短期間で容態が急変するケースが明らかになった以上、発熱後4日間は自宅待機させるルールは改めるべきではないか。2020年4月29日の参議院予算委員会で、立憲民主党・蓮舫議員が加藤勝信厚労相(当時)にこの問題の改善を要望。その結果、加藤厚労相から「37.5度4日は検査要件ではなく、受診の目安」という衝撃的な発言が飛び出し、怒りの声が噴出した。  以下、その質疑を抜粋して紹介する。(上記の動画リンクの27秒~3分14秒) 蓮舫議員: 「今の検査体制だと救えない命あるじゃないですか。著名な芸能人も自宅待機の間に重症化して病院に行って亡くなっている。(中略)2月に決めた『熱が37.5度以上4日以上続く』『呼吸困難』『強いだるさ』。もうどんどん症例は変わってきてるんだから。この検査を受ける要件、緩和してください。」 加藤厚労相: 「これは別に検査を受ける要件ではなくて、受診の診療の目安ということでありまして、これについては37.5度4日というのは要するにそこ以上超えるんだったら必ず受診をして頂きたい。そういうことで出させて頂きました。そして倦怠感等がある。この中には、よく、それも4日だ。あるいは37.5度と倦怠感が両方だと。こういう誤解はありましたから、それはそうではないんだ。倦怠感があれば、すぐに連絡をして頂きたい。こういうことは幾度となく周知をさせて頂いております。さらにまたそうした誤解があれば誤解を解消するように努力をしていかなきゃならないと思います。(中略)」 蓮舫議員: 「誤解をしたのは保健所とか国民が悪いんですか? 政府がずっと説明してきたじゃないですか!(中略)厚労省は『4日以上、37.5度以上、だるさ、厳しさ、息苦しさ』 だから電話相談したら、『あなたは典型例に合わない。まだもっと家に居てくれ。その症状だと、この外来に繋げません』て断られてる。誤解じゃないでしょ!誤解を生んだのは厚労省の説明じゃないですか!」  上記の動画を確認すると分かる通り、特筆すべきは加藤氏がこれらの厚顔無恥な発言を表情を全く変えずに淡々と述べていること。「4日間は家で」というメッセージを発しながら、「国民が誤解した」と平然と言える人物が現在は政権のスポークスマン・官房長官であることに2021年も我々は注意しなければならない。 〈*この質疑の詳細は過去記事「「発熱4日以上は検査要件ではない」間違えたのは国民や現場のせい、とでも言いたげな加藤厚労相発言を信号無視話法分析」をご参照ください〉

バグりまくった森雅子法相(当時)

第2位「検察官に勤務延長の適用が無いことにより、公務に支障が生じた事例は見当たりませんでした」森雅子法務大臣(当時)  次は、検察庁法改正案の質疑における森雅子法務大臣(当時)の自白とも言える答弁。#検察庁法改正案に抗議します のTwitterデモで注目を集めた中で迎えた2020年5月15日の衆議院内閣委員会。  強行採決の可能性があったため、国会の外に集まったデモ隊の抗議の声が委員会室にも聞こえる異様な雰囲気の中、担当大臣でありながら法案審議から逃げ続けていた森大臣がついに出席。森大臣は相変わらず質問に答えずに同じ原稿を読み続けて質疑が成り立たない場面が目立った一方、国民民主党(当時)・後藤祐一議員のある質問に答えたことによって、重要な論点の一つである「黒川検事長と検察庁法改正の関係」が明確になった。  以下、その質疑を抜粋して紹介する。(上記の動画リンクの2分0秒~4分16秒) 後藤祐一議員: 「昨年10月までは検事長が63歳以降も居座れる規定を作らなくても公務の上に著しい支障が生じるような事例は見当たらなかったということでよろしいですか? (一昨日の)武田大臣の答弁と同じでいいですかという確認です。」 森法務大臣:検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の上に著しい支障が生じた特段の事例は見当たりませんでした。後藤祐一議員: 「もう一つ伺います。(中略)『63歳以降も検事長が居座るなきゃいけないような立法事実がまさに体現化された具体的な人事のケースは黒川さんの人事の件以外にない』ということでよろしいですか? 森大臣。」 森法務大臣: 「はい。具体ではございませんでした。」 後藤祐一議員: 「黒川さんの件はそうだけど、黒川さん以外には無いということでよろしいですか?」 森法務大臣: 「その通りでございます。」 後藤祐一議員: 「ということは、この検察庁法改正案の立法事実は黒川さんのケースしか無いということをまさに森大臣は認めたということじゃないですか。森大臣は5月12日火曜日の記者会見で『黒川検事長の人事と今回の法案については関係のないものだ』と述べておられますけども、まさに関係があるじゃないですか! 唯一の立法事実と認めてるじゃないですか! そのものじゃないですか!」  この“自白“が影響したのか定かではないが、検察庁法改正案の強行採決は見送られた。 〈*この質疑の詳細は過去記事「やっぱり「黒川検事長の人事と検察庁法改正案」は関係あった! 森法相がうっかり認めてしまった答弁を信号無視話法分析で検証」をご参照ください〉
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支離滅裂な答弁だらけの菅総理
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