不誠実答弁を可視化してきた男が衝撃を受けた、2020年の国会答弁5選

国会じゃないけど、横浜市長もひどい答弁だった

第5位「IRは住民投票で決めることではない」林文子・横浜市長  最後は、国会ではなく地方議会(横浜市会)の答弁になるが、衝撃の大きさと悪質さを鑑みてカジノ誘致を巡って物議を醸した林文子市長の答弁を取り上げたい。  2020年9月25日、共産党・古谷靖彦市議の質問に対して、林市長は前月(8月)から署名が開始されたカジノの是非を問う住民投票条例の制定について「IR誘致の方針に影響を及ぼさない」とする考えを明らかにした。住民投票に法的拘束力が無いことは周知の事実だったが、民意を無視する姿勢を隠そうともしなくなった林市長の言動に衝撃が走った。  以下、その質疑を抜粋して紹介する。(上記の動画リンクの8秒~2分10秒) 古谷靖彦市議: 「市長は選挙の際には「カジノ推進だ」と言わずに当選を果たしています。で、当選してから「カジノ推進だ」と市長が進めていることに対して、市民の怒りが出ています。(中略)住民投票条例制定の運動が起こっていることについての所感を伺います。」 林文子市長: 「IRに関する直接請求の動向等については、一つの市民の皆様のお考えであるという風に私は受け止めております。(中略)市民の意見を聞いてないじゃないかというお話でございますけども、今回のIRについては住民投票をして決めるということではない。国の方のナショナルプロジェクトですから。国の方針の中で我々が手上げ方式で選択されるかどうかということでございましょうが、(中略)ご理解を頂けるようにこれからも取り組んでいきます。」 〈*この質疑の詳細は過去記事「「IR誘致方針は住民投票で決めることはない」横浜市長の衝撃的な本音が飛び出した質疑を信号無視話法分析」を参照ください〉  この衝撃的な答弁の約1ヶ月後、10月28日の記者会見で林市長は一転して、カジノ誘致の住民投票が実施されて反対多数だった場合は誘致を撤回する方針を示した。だが、林市長はカジノ誘致の賛否を巡っても発言を二転三転させた前科のある人物のため、真意は先に述べた「IRは住民投票で決めることではない」だったと見て間違いない。10月から署名が開始された市長リコールの勢いを削ぐ目的で、一時的に態度を軟化させただけであろう。

発言を場当たり的に変えてきた林市長

 なお、カジノ誘致の賛否をめぐる林市長の発言変遷は下記の動画を参照いただきたい。 ●【横浜カジノ誘致は白紙 】林文子市長の発言変遷(2014年〜2019年)  現に、市長リコールの署名が必要数に達しなかったことが明らかになった後の12月26日に林市長は住民投票の条例案に反対意見を付けて市議会に提出することが既に報じられている。さらに、年明けの1月6日から審議を行い、わずか2日後の8日は本会議で採決するという強行スケジュールとなる見込み。  横浜市会で過半数を占める自民・公明の市議によって住民投票の条例案は瞬く間に否決される可能性が極めて高いため、カジノの是非を住民投票で決めるどころか、その住民投票は実施すらされない。林市長の「住民投票で決めることではない」という9月25日の答弁は、実に的確な本音だったわけだ。  以上の5点が筆者が衝撃を受けた2020年の答弁だ。従来の政府見解が一言でひっくり返ったり、法改正の根拠が無いことが露呈したり、むきだしの本音が垣間見えたり、どれも衝撃的な答弁だったと改めて思う。  今年は、「赤信号」答弁をするような議員に「赤信号」を出してご退場頂けるようにしたい。 〈文/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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