コロナ禍の中の物流を支えたトラック業界の2020年。激変した生活で増した運送業の負担と不安

第3位 11月からのあおり運転厳罰化  今年6月、あおり運転が危険運転として処罰されるようになったのは周知の事実だろう。  それに加え、11月から行政処分が強化され、トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車があおり運転をした場合、ドライバーだけでなくその事業者も処分の対象になった。  図体の大きいトラックは、事故を起こせば被害が大きくなるのは間違いない。  しかし、あおり運転をするのは、一般ドライバーよりトラックドライバーのほうが多い、というわけでは決してない。  現役のトラックドライバーからは、  「煽り運転はもちろんダメだけど、ウインカーも出さずにチョロチョロ車線変更する一般車や、トラック前の急な割り込み、左側追い越しなども同じようにしっかり取り締まってほしい。こうした行為にこっちがクラクション鳴らしても煽り運転になるのは納得がいかない」  といった声も上がる。

トラックドライバーにとって死活問題であるトイレや衛生問題に課題

第2位 コロナ感染拡大防止対策によるコンビニトイレ提供の中止  コロナ感染拡大防止対策として、4月ごろからコンビニトイレの使用禁止が全国で広がった。  駐車場が至るところにある一般車の場合は、他のトイレを探すことも容易だが、大型トラックに乗るドライバーにとっては「死活問題」。今でも使用禁止が続く店舗があるという。  トイレは不特定多数の客が使用する手前、コンビニ側も衛生管理が大変ではあるが、大型車が駐車できる数少ないトイレ場所であるため、是非協力してあげてほしい。  借りる側のドライバーも、マナーを守ったうえで使用すべきということは言うまでもない。 第1位 ガソリンスタンドシャワーの一時使用禁止  4月、まだまだコロナウイルスの実態が分からなかった頃、ガソリンスタンドのシャワールームが一時使用禁止になったことがある。  実は街中のガソリンスタンドには、1週間以上自宅に帰れないトラックドライバーのために、店舗内にあるシャワールームを無料で開放してくれているところが多々あるのだが、コロナウイルス感染拡大防止の観点から、今年4月中旬、シャワールームが一時使用禁止になった。  結果的に1週間でこの措置は解除されたのだが、その1週間、トラックドライバーにどのように「シャワーなし」を乗り切ったのか聞いたところ、  「コンビニに置いてあるカップラーメン用のお湯を拝借し、タオルにしみ込ませて体を拭いた  「公園で頭洗った」  「ガソリンスタンドの洗車機の水で全身洗った。歯も磨いた」  といった壮絶なエピソードが次々と報告された。  印象的だったのが、こうした壮絶なエピソードを、彼らの多くがまるで武勇伝のように明るく話してくれたことだった。  車体が大きく、ノロノロ走って邪魔だし、時にはルールやマナーのなっていない一部トラックドライバーに遭遇することもあるかと思う。かく言う筆者自身もそんなトラックに遭遇することもあるが、各ドライバーは車両に関係なく、それぞれの事情を汲むことが大事。  大変な時期がまだまだ続くが、1人ひとりが「余裕」を持ち、来年もより快適な道路環境が築けるといい。 <取材・文/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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