東欧のコロナショックに立ち向かう日系中小企業の奮闘。板金プレスメーカーが高性能マスクを生産し、現地教育機関に寄贈
世界各地で再びコロナショックが押し寄せ、日本でも医療崩壊の危険性が叫ばれている年の瀬。中小企業も壊滅的な打撃を受けているが、そんななか明るいニュースが舞い込んできた。
舞台となっているのは、大晦日に戒厳令まで導入される予定のポーランド。欧州各国と同じく秋から感染者が増大し、飲食店などは軒並みテイクアウトのみの営業。大型商業施設なども一部の店舗を除いて営業が停止している。
そんな暗い雰囲気を打ち破ったのは、なんと日系中小企業。物語の主役は主に自動車部品などを製造している創美クラフト・ポーランド(以下、創美ポーランド)だ。
当サイトでは以前も同社の試みを紹介したが、コロナショックが押し寄せ、大手自動車メーカーなどが工場の操業を一時中止するなか、下請けである創美ポーランドも当然その影響を受けることとなった。
そんな危機的状況のなか、創美ポーランドはまったくの異業種である高性能マスクの生産に乗り出した。当然、それまでマスク作りの経験はゼロ。言わば「日本の町工場」が、遠い異国の人々を手助けするため、新たなチャレンジに乗り出したわけだ。
細かい経緯については過去の記事をご覧いただきたいが、紆余曲折ありながらも、ついに同社のマスクは無事に完成。今年春に生産に着手し始め、11月には医療機関の認証を取得。同月販売を開始するという異例のハイスピードで、現地教育機関への寄贈式が行われる運びになった。
繰り返しになってしまうが、創美ポーランドは普段は自動車や空調用の精密部品を製造している板金プレスメーカーである。コロナショックが直撃しながら、高性能マスクという、まるで異なる製品をこれだけ短い期間で製造するというのは、並大抵のことではない。
寄贈式に先立っては、宮島明夫・駐ポーランド日本国大使、モギレンスク群のノヴァツキ郡長らが同社の工場を視察した。
精密部品を製造するロボットと、現地ポーランドの従業員が並んで作業する現場について、宮島大使は「テクノロジーと人だけでなく、人と人との繋がりが感じられる」と視察後の会談でコメントした。
ポーランドに限らず、日系企業のなかには「日本式」の働き方を一方的に押しつけたり、現地従業員との間に摩擦が生じるケースも少なくない。しかし、こと創美ポーランドに関しては日本人、ポーランド人、そして最新鋭の設備がひとつとなったことが、今回のマスク生産を実現させた原動力であることは間違いない。
同社取締役の浅野慶一郎氏は「ファミリー」であることを強く意識しているそうだが、実際に現地の従業員に(こっそり)話を聞くと、「他の企業に比べて待遇もいいし、働きやすい」「職場の雰囲気がよくて、一体感が感じられる」といった声があがった。
板金プレスメーカーが高性能マスクを生産!?
現地従業員からも明るい声が
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