七面鳥じゃなくて鯉、サンタは2回来る? 欧州キリスト教国のクリスマスは日本と大違い

 コロナウイルスの影響で辛い一年となった2020年も年の瀬。いまだに各国では厳しいロックダウンや外出制限が行われているが、そんな最中、ようやく家族団欒のひとときであるクリスマスがやってきた。

コロナの影響でツリーの売り上げはむしろ好調

イルミネーションの様子 とはいえ、コロナショックの有無に関わらず、各国・各家庭で微妙に風習が異なるのがクリスマス。筆者が滞在しているポーランドでも、日本では見られないような光景が毎年広がっている。今回はそんなポーランドのクリスマスを彩るキーワードをご紹介したい。  <クリスマスツリー> クリスマスツリー クリスマス(Boże Narodzenie/神の生誕)と言えば、まず思い浮かぶのがツリー。ポーランドも例外ではなく、各家庭では綺麗に飾りつけられたもみの木が鎮座する。コロナショックの影響で今年はクリスマスの過ごし方にも多くの制限が課せられているが、現地の造園業者に話を聞くと、むしろ例年よりもツリーの売れ行きは好調なのだとか。  「もみの木は落ちた葉を掃除したり、水をあげなきゃいけないから、手間がかかりますよね。近年はプラスチックのツリーを買う家庭も増えています。けど、今年はむしろいつもより売れ行きがよくて、クリスマスの10日前にはツリーがすべて売れ切れました。コロナの影響で支出が減っているのと、クリスマスぐらいは明るく過ごしたい……という心理が働いているのかもしれないですね。なんにせよ、我々造園業者にとっては嬉しい話で、安心してクリスマスを迎えられます」  ポーランドは国民の9割以上がキリスト教のカトリックを信仰している。イエス・キリストが生まれたクリスマスは、新年よりも大きなイベントとして祝われるだけに、そのシンボルとも言えるツリーにも力が入るのだ。

クリスマスのテーブルに空席があるワケ

 <鯉>  ハリウッド映画などのイメージから、クリスマスと言えば七面鳥を連想する読者も多いだろう。しかし、ここポーランドや周辺のドイツチェコクリスマス料理の定番といえば鯉だ。  そもそも、ポーランドでは伝統的にクリスマスイブ(Wigilia/ヴィギリアと呼ばれる)の日は肉を食べないことが一般的。食卓の上にはキノコ料理キャベツの入ったピエロギなど、ヘルシーなメニューが並ぶ。鯉が定番料理として普及し始めたのは大戦前後と言われており、現地で話を聞くと「安くて手に入れやすいし、それなりに美味いからじゃないかな」とややボンヤリした説明が返ってきた。  現在はできあいのものを購入する家庭も多いが、やはり生きた鯉を各自でさばくのが王道。かくいう筆者も小さい頃、祖母の家に生きた鯉がやってきたことは強く記憶に残っている。  風呂桶に入った鯉を見て、「ペットだ〜!」とはしゃいでいたのも束の間。包丁片手に返り血を浴びた祖母が風呂場から姿を現したことは生涯忘れないだろう。  また、「オプワテック」と呼ばれる白い板状のワッフルもポーランドのクリスマスには欠かせない。各々このオプワテックを手にし、相手の健康などを祈りながら、お互いのものをわけあうというのも、クリスマスのテーブルで目にする光景だ(ちなみに味はほぼしない)。  <空席>  そんなクリスマスイブ=ヴィギリアのテーブルには、食器が準備された空席があるのも伝統のひとつ。これは人数を間違えているのではなく、急な来客があったときのために用意されているホームレス身寄りのない人など、招待がなくてもヴィギリアの食卓では誰もが歓迎されるのだ。  筆者の家庭にも、ちょうど日本を旅行していたポーランド人の観光客がやってきたことがあるが、クリスマスはみんなで肩を寄せ合って過ごすという意識が浸透している証拠だろう。その後、特にその観光客とやり取りはしていないが、赤の他人がテーブルについていた光景も、クリスマスの思い出のひとつだ。
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放映がなくて抗議運動まで起きたクリスマス映画とは?
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