七面鳥じゃなくて鯉、サンタは2回来る? 欧州キリスト教国のクリスマスは日本と大違い

ポーランドのサンタは2回やってくる!

イルミネーションの様子 <サンタクロース>  さて、ヴィギリアのディナーが終わると、いよいよプレゼント交換。子どものいる家庭ではサンタクロース(ポーランドではミコワイと呼ばれる)に扮した大人がプレゼントを持ってくるのだが、実はこのサンタ、ポーランドではなんと年に2回やってくるのだ!  最初にやってくるのは12月6日、サンタクロースの起源とされるミラの聖ニコラウスの日。「ミコワイキ(Mikołajki)」と呼ばれるこの日は、枕元や靴が並べられた玄関などにプレゼントが置かれる。言ってみれば「サンタの日」なわけだが、祝ってもらう当の本人がプレゼントを配らなければいけないのは、謎である。  もちろん、イブことヴィギリアではより豪勢なプレゼントが配られるわけだが、集まる人数が多いせいもあるだろうが、日本に比べると値段的にはややリーズナブルな印象。子どもにはやはりオモチャやテレビゲームが配られるが、大人のプレゼントにはセーターや靴下などの衣服、ちょっとしたお役立ちグッズなどが一般的だ。

視聴者がブチギレたクリスマスの定番映画

 <クリスマスの礼拝>  食事とプレゼント交換が終わると、深夜0時には教会へ行くことが伝統。「パステルカ(pasterka)」と呼ばれるクリスマスミサに足を運ぶのだが、この文化は以前に比べるとやや下火に。前述のとおり、ポーランドはカトリックの信者がほとんどだが、実際に毎週教会に足を運ぶ人の割合は、若者を中心に減りつつある。こうしたクリスマスの変遷についてポーランド人が必ず口にするのは、次のようなフレーズだ。  「今のクリスマスは雪がない」  温暖化の影響か、近年はホワイトクリスマスが激減している。40代以上ならば間違いなく、「昔は膝どころか腰まで雪が積もっていて、掻きわけながらパステルカに向かったものさ」と振り返ってくれるはずだ。とはいえ、20代前半の若者も「昔のクリスマスはいつも雪が降っていた」と言うので、「雪の降り積もったクリスマスが一番」というのはポーランド人全体に共通した認識なのだろう。  「今のクリスマスは参加者が少ない」  これもポーランド人からは必ず聞かれるフレーズ。核家族化が進み、少人数で過ごす家庭が増えているが、以前は従兄弟なども含めて一族郎党集うのが伝統だった。  親しい人々と暖かい家で過ごしながら、こういった愚痴をこぼすのもポーランドのクリスマスの伝統と言えるかもしれない。  <クリスマス映画>  さて、そんなクリスマスも食事やプレゼント交換、親戚への挨拶などが終わるとやや退屈になり始めるが、そこで活躍するのがクリスマス映画。アメリカでは大名作『素晴らしき哉、人生!』が王道で、近年は『ダイハード』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』などが新たなスタンダードとして台頭しつつあるが、ポーランドで圧倒的な人気を誇るのは『ホーム・アローン』だ。  ポーランドでは「ケヴィンはお家に一人」というタイトルで親しまれている同作。その人気はハンパではなく、現地で話を聞くと放送スケジュールが組まれなかったことで、大規模な抗議運動にまで発展したこともあるのだとか。 「『ホーム・アローン』なんてクリスマスじゃなくても放送されるからね。それである年、『夏に放送したばかりだから、今年は違う映画を流す』ってテレビ局が放送スケジュールから外したんだよ。そうしたら、『クリスマスに「ホーム・アローン」を流さないとかふざけてんのか!?』って視聴者から抗議が殺到したんだよ。結局テレビ局が折れて、放送されてたね」  日本とはまったく違う違う過ごし方をするポーランドのクリスマス。まずは鯉と『ホーム・アローン』から参考にしてみてはいかがだろう。 <取材・文・撮影/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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