この事態を受け、ポルノハブはサイト上で次のような声明を発表した。(参照:
Pornhub)
「未承認のアップローダーを削除する規約により、コンテンツパートナーやモデル・プログラムの会員によって製作されたものではない過去の動画も停止されました。(中略)
ポルノハブのすべてのコンテンツは承認済みのアップローダーによるもので、これは
フェイスブック、
インスタグラム、
ティックトック、
ユーチューブ、
スナップチャットや
ツイッターのようなプラットフォームでもまだ導入されていない条件です」
そう胸を張るポルノハブだが、「
VICE」が報じているように、決して「無条件降伏」をしたわけではない。一時的に大量の動画が削除されたものの、
その数は翌日には再び上昇し、さらに声明では
今回の件についての反論も述べられている。(参照:
VICE)
「ポルノハブの声明は第三者機関であるインターネット・ウォッチ・ファウンデーションの報告にも言及している。これによると、ポルノハブ上では
過去3年間で118件の性的児童虐待の素材が確認され、同時期にフェイスブックが独自に行なった調査では、ソーシャル・メディアのプラットフォーム上で
8400万件の性的児童虐待の素材が発見されたという。
『ポルノハブが標的にされたのは、我々のポリシーや同業者との比較が理由ではなく、
アダルト・コンテンツのプラットフォームだからです』と声明では述べられている。『反対キャンペーンで弊社を槍玉に挙げた2つの団体は、
ナショナル・センター・オン・セクシュアル・エクスプロイテーション(性的搾取全国機構)と
エクソダス・クライ/トラフィッキング・ハブです。これらの団体は
ポルノ、同団体が
猥褻であると主張する素材、
商業目的の性産業を根絶することを目的としています。これらは50年以上かけて
プレイボーイ誌、
全米芸術基金、
性教育、
LGBTQの権利、
女性の権利、そして
アメリカ図書館協会までも悪に見せようとしてきました。今日、それはポルノハブに起こったのです』」
前述のように、
ポルノと表現の自由は切っても切れない関係にある。しかし、
児童虐待、
性的暴行の動画が大量にアップロード/シェアされていたのは紛れもない事実だ。
「
倫理観の高い記者がフォーカスを当てたから」「
人権団体が騒いだから」と矛先を逸らすことは、
そういった犯罪行為を助長することにほかならない。今回の問題については、
ポルノの有無とは別に考えるべきだろう。
しかし、現実にはそういった問題を一切無視して、「
無料のポルノが削除された」というだけの
身勝手な理由で、キッカケとなった「ニューヨーク・タイムズ」の記者への
脅迫・中傷が相次いでいる。さらに残念なのは、
その多くが我々日本人によるものだということだ。
「こっちは笑い事じゃないんだよ」
「pornhub返してください」
「くたばれ」
「しゃしゃんなクソフェミ」
「絶対にお前を許さない」
「そういうの撮られるのも自己責任だろ」
「きえろ」
「日本では13歳でセックスしていいんだぞ!」
上記はその一部だが、目を覆いたくなる惨状である。同記者のツイッターアカウントには「
死んでしまえ」といった直接的なミームや、ツイッターの規約に違反して削除されたリプライも多く散見される。また、記者自身も
日本からの誹謗中傷や殺害予告を受けていると投稿している。
野放しになった児童虐待、性的暴行動画やリベンジポルノを告発した記者に対して、殺害予告や誹謗中傷を浴びせる人々の姿は、まさに
日本の恥である。
さらにいえば、削除された動画は日本のAVメーカーなどの作品を違法アップロードされていたものが少なくない。この件で怒りを表明する人々こそ、日本のAV産業に対する権利侵害を助長しているという意識はあるのだろうか。
かねてから、性産業の人権問題に関して遅れをとっていると国内外から指摘されている日本だが、
こういった人々の行動によってそうしたイメージはさらに固められるだろう。ポルノハブの動画削除がキッカケとなり、そうした問題にあらためてスポットが当たる日も、そう遠くないかもしれない。
<取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン