10月18日の陥没現場と、11月3日と21日に発見された空洞の現場を表すイラスト。細長い長方形はシールドマシンの掘削ルート。いずれも掘削の直上で発生しているのがわかる
11月6・7日には、NEXCO東日本が地域限定で説明会を開催した。
だが地元住民によれば、
「説明会場に入れたのは、事前にチラシ配布された住民だけ。空席もあったのに地元住民の私は入れてもらえなかった」という極めて限られたものだった。
説明会で住民から出た「どうやって地中の安全を確認するのか?」「今度、どういうプロセスで工事を再開するのか?」などの質問には、すべて
「有識者委員会が原因究明をしてから検討します」だけの回答に終始したことも住民の怒りに火をつけた。
ただし、今回の陥没事故の前に多くの住民が感じていた家屋の振動について、NEXCOが
「シールドマシンの振動が、礫(石ころの地層)で伝わったかなと推測している」と、工事との因果関係を認めるかのような発言をしたのは覚えておいていい。
10月18日に陥没した現場の写真とともに集会は始まった
このような事業者の姿勢に不安を強めた住民が開催したのが冒頭の集会だ。
まず、陥没現場の近くに住む住民が発言をした。
「この1か月間は、毎日『次は何が起きるのか』との不安と一緒に暮らしていました。昨日(10月21日)も近所の家がきしむので、NEXCOはその家に『避難準備を』と指示しましたが、我が家の大学4年生の孫が『怖いよ!』と大泣きしました」(近田真代さん)
「私は陥没現場から十数mの家に住んでいます。9月6日から今も低周波に苦しめられています。他の住民たちも振動に困っていて、なかには『陥没するのでは』との声もあったんです」(菊地春代さん)
だが、これらの不安にNEXCOは応えない。そこでこの集会の直前に、約30人の住民が集まり話し合い、立ち上げたのが「外環被害住民連絡会・調布」(以下、連絡会)だ。代表の滝上広水さん(71歳)も外環道のルート直上に住むが、今回の陥没事故を受けてシールドマシンが稼働を停止したときに「ものすごい揺れと振動があった」と振り返る。
滝上さんは「連絡会としては、NEXCOや国に住民を交えての協議を求めていきます」と表明した。
この集会で印象深かったのは、一般参加していた、全国のトンネル工事に携わってきた男性からの発言だった。
「今回の事故で注目すべきは、掘削の1か月後に陥没したことです。シールドマシンは土を取りすぎると、土中の水も抜けます。そして直上だけでなく100~200m周辺の地盤にも影響が及ぶのです。だからまだ陥没するかもしれない」
そして集会終了後、菊地さん(前出)が筆者に「NEXCOは陥没地周辺の地中をボーリング調査などで調べていますが、新しい空洞が出るかもしれないんです。あ、まだ秘密ですよ」と教えてくれた。
ところが、その数時間後の22日午前3時。NEXCOが菊池さん自宅のチャイムを鳴らした。果たして、新しい空洞(長さ27m)が発見されたことを報告に来たのだ。
後日、菊地さんは「もう引っ越しを考えている住民もいます。でも不動産価値の下落が確実な以上、家も土地も売れないから引っ越しもできない。NEXCOはどう応えるのでしょう」と不安を漏らした。
その22日、連絡会(前出)は、「東つつじヶ丘2丁目陥没・空洞に関する要望書」をNEXCO東日本と中日本の両社に提出。求めたのは以下の3点だ。
①被害住民連絡会との面談の早急の設定。
②ボーリング調査の内容を連絡会に毎週報告すること。
③新たな空洞について、補償を含めた説明をすること。
なお、有識者委員会は12月上旬には、事故の原因究明の調査報告をする予定だ。もし工事との因果関係を認めれば工事は止まり、因果関係には触れずに、工事を再開しても、また陥没の可能性があるだけに、果たしてどのような報告をするのか、関係者は熱い視線を注いでいる。
<文・写真/樫田秀樹>