香港の若き活動家・周庭に10か月の実刑判決。中国政府による見せしめのための重すぎる処罰

「判決が出てからは堰を切ったように泣きだして…」

周庭

周庭らを乗せたと思われる車両に多くの支援者がエールを送った

 そんな予想を覆す量刑が言い渡された周庭のショックは想像以上のものだった。2日の裁判を傍聴した周庭の友人が話す。 「法廷に入ってから彼女はずっと下を向きっぱなしで肩で息をしていました。女性警察官も心配そうに『大丈夫?』と声をかけていたほど。判決が出てからは堰を切ったように泣きだして、見ていられませんでした」  親しい友人にも見せたことのない号泣ぶりに、傍聴席の支援者からも涙がこぼれたという。 「今回の裁判とは別に、周庭は8月に国安法違反でも逮捕されていますが、いまだに警察は容疑を明らかにしていません。それが不安を煽ったのか、8月以降、彼女は体調を崩してしまったんです。原因不明の痛みに襲われて医師に処方された薬を服用するようになり、一人で晩酌するほど大好きだった日本酒も控えるようになりました。  ただ、どんなにつらくても、人前で涙を見せることはなかった。そんな周庭が泣き崩れ、警察官に抱えられるように法廷をあとにした姿は忘れられません……」(友人)

見せしめのための刑罰

 なぜ、初犯の周庭にまで重い刑が科せられたのか? 倉田氏は「日本に一因がある」と見る。 「周庭と黄之鋒は語学が堪能で、民主活動家のなかでも特に海外での発信力がある2人。彼らが海外の政治家・運動家との連携を深めた結果、昨年には香港における人権侵害に対して制裁を科すことを盛り込んだ香港人権・民主主義法案が米国で成立しました。このような影響力を危惧して、見せしめのために刑罰を科したのでしょう。  事実、裁判長は『市民の安全と財産の保護のため、3人には公開の場で叱責を与え、市民を脅かさないよう“抑止”のための刑罰を与える必要がある』と述べています。周庭に関していえば、日本に対する発信力の大きさが背景にあったのは間違いありません。彼女に科された刑の重さを真っ先に受け止めるべきは日本なのです」  その判決翌日の12月3日には香港で最も人気のある民主派新聞『アップルデイリー』創業者の黎智英(ジミー・ライ)が突如、詐欺容疑で起訴されている。保釈が認められず、来年4月までの長期勾留が確定したことで、「言論弾圧だと大きな反発を呼んだ」(香港人ジャーナリスト)という。  民主派の在日香港人で組織された「香港の夜明け」メンバーも「“無実の罪”で民主活動家を収監することによって、香港人を黙らせようとしている」と指摘。「周庭さんなど発信力ある活動家の収監で海外の人たちが香港の実情を知る機会が減ってしまう可能性がある」と危機感を募らせている。  実は、12月3日は周庭の24回目の誕生日だった。この日、SNS上に公開された彼女の手紙には「一日も早く正義が戻るように」との日本語のメッセージが綴られている。今は「鍛錬の過程である」とも表現している。その思いを、日本も受け止めるべきだろう。
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中国・政府による民主派弾圧が続く香港
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