「中華航空(チャイナ・エアライン)」も見納めに?新型コロナで進む台湾の「脱CHINA」

すでに新塗装機体の目撃情報も

中華民国(台湾)総統府

中華民国(台湾)総統府(旧・台湾総督府、台北市)

 もともと「中華民国」は中国国民党が中国大陸での内戦に敗れたことで拠点を台湾に移した政府であり、台湾には歴史的経緯から政府系を中心に「中華」「中国」を冠した企業や団体が複数存在する。日本では、「中華人民共和国」と台湾を統治する「中華民国」が異なった政府であることは周知の事実だが、英語表記が「CHINA AIRLINES(チャイナ・エアライン)」である中華航空は、中国の航空会社であり英語表記が「AIR CHINA(エア・チャイナ)」である中国国際航空(本社:中国・北京市)をはじめとした中華人民共和国の航空会社と混同されることも多かったという。  台湾政府は、とくに新型コロナウイルスの感染拡大後に中華航空が中華人民共和国の航空会社と間違われることで実際に大きな不利益を被ったとしており、4月には蘇貞昌・行政院長(日本の総理大臣に相当)がこれを問題視。7月には、台湾立法院(国会)で中華航空の名称を正すための法案が通過するに至った。  11月には米国内で「CHINA AIRLINES」の表記が機体端にかなり小さく書かれた「新塗装」の機体が目撃されているといい、「いよいよ改名準備か」との声が聞かれている。

新型コロナで一気に加速する台湾の「脱CHINA」

 台湾政府による「脱CHINA」の動きは中華航空のみに留まらない。  台湾立法院では、中華航空の名称問題に合わせて台湾のパスポート(旅券=護照)から中華民国の英語表記「REPUBLIC OF CHINA」の文字を外す決議案も通過。9月に発表された新デザインでは、「REPUBLIC OF CHINA」(中華民国)の表記は残されたものの、その文字サイズはかなり小さくなり、「TAIWAN」(台湾)の表記が目立つものとなった。このパスポートのデザイン変更も「新型コロナウイルスの感染拡大後に中国人と間違われて実害を被った」という、複数の海外在住台湾人団体からの要請を受けてのものであったという。  新型コロナ以前から、現在の台湾与党・民進党(民主進歩党)は将来的に国号から「中華/CHINA」の文字を外して「台湾/TAIWAN」の文字を入れるという「台湾正名政策」を掲げていた。2007年2月には、民進党で初の台湾総統となった陳水扁氏がその一環で郵便組織「中華郵政」を「台湾郵政」と改名。しかし、2008年に中国国民党所属で香港出身の馬英九が総統に選出されると、自身の切手が発行されることに合わせて名称を「中華郵政」へと戻している。このように「台湾正名政策」「脱CHINA」は時の政権の意向や中国の圧力などにより大きな影響を受けてしまうため、「一進一退」が続いていた。  こうした状況のなか、新型コロナウイルスの感染拡大は「台湾正名運動」を大きく後押しさせることへと繋がった。
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他の台湾企業にもこの流れは広がるか?
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