最前線から見た、日本の米大統領選不正選挙論。BBQ-BEER-FREEDOMおじさんとその背景

BBFおじさんの登場

BBFおじさん

BBFおじさん(Twitterより)

 会見翌日にはトランプ支持者たちが開票所に集まり圧力をかけ始める。ただ、彼らはバイデンが勝ちそうなミシガンでは「票を数えるな!」と叫び、トランプが勝ちそうなアリゾナでは「票を数えろ!」と叫んだことから、彼らがいかにご都合主義であるかを世に知らしめる珍事となった。  そしてネバダ州の開票所に彗星のように現れたあるおじさんが時の人となった。会見をいきなりジャックし「バイデンは票を盗んだ!犯罪一家だ!」と叫び、そそくさと去っていったこのおじさんは、着ていたそのタンクトップの文字からBBQBEERFREEDOMおじさんと呼ばれ、不正選挙デマを鵜呑みにする狂信者のアイコンとなった。爆発的に注目され、いじられ、このタンクトップは一時期、販売サイトでも売り切れが続出した。 https://twitter.com/oogesatarou/status/1324332617974599681?s=20  このBBFおじさんの存在が、不正選挙論者のイメージを一気に急落させていく。#BBQBEERFREEDOM は瞬く間に世界中にバズり、日本の不正選挙論者のツイートにも貼り付けられ、彼らのイメージは頓珍漢でポンコツな存在として失墜していった。ちなみに来年のハロウィンの仮装はこのおじさんがブームになるとの噂がある。

不正選挙開票所の異様な雰囲気

対峙するトランプ支持者とバイデン支持者

トランプ支持者たち

 しかし、笑ってばかりもいられなかった。私が滞在していたペンシルベニア州フィラデルフィアの開票結果がこの選挙の決着をつける場所となったことで、開票所前では「STOP THE COUNT !(票を数えるな)」と叫ぶトランプ派と、「COUNT EVERY VOTE!(すべての票を数えよ)」と叫ぶ人々の警察を挟んでの睨み合いが続いていた。  苦々しく敵意剥きだしで「バイデンは共産主義者だ!」と叫び星条旗をふるトランプ派と、DJブースからごきげんな音楽を流し踊る開票派。この現場を見ただけでどちらが民主主義者なのかはおのずと理解できる構造になっていた。  しかし5日の夜、その開票所から徒歩2分半の場所まで銃で武装したQアノンが迫り警察に拘束される事件があった。彼らもやはり「不正選挙」を主張し、開票所の襲撃を計画していたのだ。一寸先は闇。フェイクニュースが殺人にまで直結することを痛感する、現場にいる者として笑えない事件だった。  7日昼にフィラデルフィアの結果が出て、バイデンの勝利は確定した。  昼に開票結果を出したのも、夜に出すと混乱が起こる可能性があったためと言われている。フィラデルフィアの街は大騒ぎだった。誰もがこの4年間のストレスから解放されたことを祝っていた。「異常が正常に戻っただけさ」そんなクールだけれど確かな喜びが街に充満していた。  そして威勢よく振る舞っていた投票所前のトランプ支持者たちも、この後、完全に無視され、4日ほどで誰もいなくなった。案外脆弱なものだ。  あれから20日がたった。  結果は両陣営とも最大の得票数だった。これを陰謀論に結びつける人もいるが、全米の人口がこの10年で2500万人増えていることを考えれば当然だろう。蓋を開けてみれば550万票の大差がついた。不正選挙を叫ぶトランプ弁護団の訴えは35件以上が裁判所に退けられ、責任者のジュリアーニは高級ホテルと間違えて似た名前の造園業者の前(ポルノショップと葬儀屋の間)で記者会見をしたり、脂汗で白髪染めが溶けて黒い汗を流したり、ポンコツじみた話題に事欠かなかった。60億円以上とされるこの弁護士費用をトランプは寄付によって集めているが、その用紙には小さく、半額を選挙費用の借金返済に当てることが書かれている。今のうちに支持者から搾れるだけ搾り取ってやろうという悲しき敗北者の姿がそこに垣間見える。信者と書いて儲かるなわけである。
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そして日本だけが取り残される不正選挙デマ
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