IHME2020/11/12更新エピデミック予測を見る
それでは実際に2020/11/12に更新されたIHMEによる本邦のエピデミック予測を見てみましょう。既述のように本邦以外は11/19に更新されましたが、本邦のみ11/12更新で止まっています。但し、別に公開されている数値データによれば、本邦についても11/19更新で10%足らずの上方修正ですので多くは変わりません。
グラフには赤、紫、緑の三つの破線が示してあるものがありますが、現状維持で何も追加対策しない場合が赤破線です。紫破線は、日毎死亡者が8ppm(1000人/日)に達したときにロックダウンなどの介入が生じるシナリオです。緑破線は、紫破線に加えて即時全員マスク着用義務化のシナリオです。
このまま何もしなければ、本邦は第3波エピデミックに蹂躙され、3月1日までに33,373人(11/19更新予測で36,393人)が亡くなり、更に増加すると言う予測となります。同日、日毎死亡者数は約1,200人であり、人口比修正すると現在の合衆国(2,000人/日以上)より遥かに悪い状態となります。推定される日毎新規感染者数は、3/1には約14万人/日となり、医療崩壊もあってこれらの人々の約5%が3週間後に亡くなります。
医療資源については、2月1日頃まで持つと言う楽観的な予測ですが、現実には既に大阪と札幌で医療がウィルスに圧倒されつつあり、東京や地方でも医療が圧倒される兆候がある為、IHMEによる予測は楽観的に過ぎます。
一方でマスク着用率は世界で最も優秀な成績であり、市民の命を守っています。逆に社会的距離は芳しくありません。
これらは11/4迄のエピカーブ実績から、このまま何も対策しなかった場合の予測ですので今後の私的介入、公的介入によって大きく緩和することができます。とくに
公的介入による社会的行動制限の威力は絶大で、一足先に秋の波に蹂躙されつつあったフランスやイタリア、英国などは9月からの段階的社会的行動制限と11月からのロックダウンによってクリスマスまでには制圧できる可能性があります。
本邦を除く多くの国では、2ヶ月に及ぶ長期ロックダウンの苦い経験からロックダウンを回避、せめて遅らせる為の様々な介入手法を編み出しており、ロックダウンも30日で切り上げる、学校だけは閉鎖しない工夫をするなど様々な努力をしています。結果、フランスなどでは既にエピカーブが急降下しており、ロックダウンの緩和、早期収束を企図しています。欧州では「クリスマスまでには収束させる」という強い考えがあり、春の経験から早期介入の強い動機になっています。
但し、
第1次世界大戦から「クリスマスまでには」は、最悪の死亡フラグであり失敗フラグですので、筆者は強く懸念しています。
IHMEによる11/12予測では、最新のデータが11/4までであり、11/19予測も精々11/11迄です。またIHMEの予測は3週間前までの傾向に強く影響されますので、11/12,11/19更新の予測は過小評価になる可能性があります。したがって、IHMEによる中期・長期予測は、11/26,12/3更新で現在の傾向での予測は十分な精度を持つと筆者は考えています。
IHMEは、毎週金曜日には予測を更新されており本稿公開前後には新しい予測が公開されていると思いますので、比較されると良いでしょう。大きな変化があれば追って解説します。
それでは最後に
東部アジア・大洋州諸国の現状を見ましょう。ミャンマー・中国・モンゴル以東の東部アジア・大洋州諸国*は、謎々効果(Factor Xと呼称する人も居る)により、感染者の発生率が他地域の1/100〜1/50となっています。謎々効果は、アフリカ大陸全域でも見出されますが、領域外では感染者が激増すると言う謎の現象が見出されます。
〈*これまで筆者は、謎々効果影響下にある国を「カンボジア・中国・モンゴル以東の東部アジア・大洋州諸国」と記してきたが、これはミャンマーとタイを失念していた為の誤りである。すべて「
ミャンマー・中国・モンゴル以東の東部アジア・大洋州諸国」と訂正する〉
本邦の状態を分析するには、謎々効果の影響下にある領域内の国同士で比較する必要があります。
本邦と隣国韓国は、ほぼ同時(韓国は、本邦に約15日遅れ)に秋の波に見舞われており、奇しくも新型コロナ・ノーガード国と新型コロナ対策模範国の対比ができると言う状況にあります。
東部アジア・大洋州諸国典型国ではすでにWithoutコロナ状態で、厳しい水際防衛の一方で国内では平静を取り戻し、経済活動を謳歌しています。現在の
ニュージーランドのようにSpikeに見舞われても数週間で制圧してしまいます。これらは、それぞれの国の不断の努力の結果です。
一方で
マレーシア、ミャンマー、日本、インドネシア、フィリピンの
コロナ駄目5カ国は、非常に厳しい状況であり、特に本邦は、高緯度であるがゆえに適切な対応をせねば悲惨な将来が待っています。
韓国は、8/15に行われた右派宗教団体、サラン第一教会によるバイオテロールと言っても良いソウルにおける5万人ゲリラ集会の余波を原因として秋の波が発生しており、まさにいまが制圧できるか否かの転換点であって世界が注目しています。
今回のようなエピデミックSurgeには、迅速な対応が求められ、3月の第1波パンデミックでは、対策が1週間早ければ米欧は実績に比して被害1/3で済み、2週間早ければほぼ無傷であったという指摘もなされています。
残念ながら本邦は、既に
早期対策の限界を超えてしまっていますが、謎々効果はまだ有効で、あと10日程度の余裕を持っていると筆者は考えています。
本邦は、
まさに決断の時を迎えています。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ31:迫り来る地獄2
<文/牧田寛>
Twitter ID:
@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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