「結局在学中の学生の方が有利になるのでは」という懸念も
次に話を聞いたのは、現在就職活動真っ最中の大学4年生、片山隆太さん(仮名)。都内の有名大学に通う片山さんだが、現時点でまだ内定を獲得できていないと話す。「卒業後3年以内は新卒扱い」とする要請についてどう思うか尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。
「内定がない自分的にはありがたいです。ただ今までの就活でも、卒業後も新卒採用を受けたりできたので、卒業後3年以内が新卒扱いになってもあんまり差がないんじゃないかな…とも思います。実際に新卒扱いになっても、採用を受けるときには結局在学中の学生の方が有利になるんじゃないかなという懸念もありますね。制度として骨抜きにならなければ良いのですが…」
確かに「どれだけ有名な大学を卒業していても、新卒カードを手放した瞬間に終わる」という言説はインターネット上で散見される。現在内定を持っていない大学生は、「就職先が決まらないまま卒業することになってしまうかもしれない」という焦りを抱いていることだろう。片山さんは、「大学3年のときの方が自分だったら嬉しかったかも」と話す。
「本当に在学中の大学生と同じ土俵に立てるなら、の話ですけど、何も無理して在学中に就活しなくていいですし。キャリアの選び方の幅は広がりそうですよね。日本は一括採用のところが多いから、決まった時期に仕事を手に入れないといけないですけど、海外みたいに就活の時期を自分で選べるようになるのはメリットも多いと思います」
片山さんは「もし大学3年のときにこの制度があったら、多分まだ就活してないと思うなあ」と笑った。
「決まらないのは欠点があるからだと思うのが普通なんじゃ…」
最後に話を聞いたのは今年3月に大学を卒業し、現在「既卒」として就職活動をする23歳の山田なぎささん(仮名)。彼女はこの要請に対して複雑な思いを抱えているという。
「卒業後3年以内が新卒として扱われるようになったら嬉しいですけど、やっぱり企業は在学中の学生を選びたがるんじゃないですかね。留学とかの理由があるならまだしも、大学時代から就活をしていたのに決まらなくて卒業した人たちには何か欠点があると思うのが普通なんじゃないでしょうか」
現在も就職活動を続けているという山田さんは、なかなかうまく行かない状況に自己肯定感も低下している様子だ。現在、既卒は実際にどのような扱いを受けるのか聞いてみた。
「新卒のときに比べて、ES(エントリーシート)で落とされる率が圧倒的に高くなりました。面接でも、既卒であることを話した瞬間に『あー…』と言われたことも一度や二度ではないですね」
就職活動に疲れ気味の彼女にとっては、嬉しいはずの知らせにも悲観的になってしまうというのが本音のようだ。
今回報道された件ははあくまで「要請」であるため、実行されるとしても時間はかかるであろうが、筆者も「卒業後3年以内を新卒」として扱うことには概ね賛成である。と言っても、3年以内の既卒と新卒を平等に評価するならの話だが。何にせよ、ひとりひとりが最終的に納得のいく就職ができ、幸せな人生を送れる世の中になってほしいと思う。
<取材・文/火野雪穂>
97年生まれのライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。