種苗法改正、必要なのは拙速な成立ではなく、生産者側の不安や批判を無視せず真摯な説明と議論
地域の在来種は守られるのか?

「地方から反対の狼煙をあげる」と宣言した、農学博士・前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員
拙速に決めるのではなく、農家の声をよく聞くことが不可欠
農水省や種苗法改定に賛成の論者は「種苗法改定で規制される登録品種は一部にすぎず、広く一般に流通している品種は自家増殖可能」と主張している。しかし、農家の生の声を紹介した先の映画『種は誰のもの』には、自家増殖できなくなる登録品種とは知らずにコメなどを作ってきた農家も登場する。それを生産者側の不勉強と切って捨てるのはあまりに一方的だろう。こうした一方的な視点は、現状を十分に把握せずに悪影響を過少評価する一方、育種権者の知的財産権を過大に拡大させる恐れがある。
製造業でも、知的財産権を金科玉条のように振りかざす弊害が出ている。ほとんど公知の技術であっても関連特許を大量出願し、特許権侵害を訴える”特許ビジネス”が横行、本来のものづくりに悪影響を及ぼしているのだ。
同じように農業分野でも、モンサントなどのグローバル企業が育種権者の知的財産権を主張、伝統的な農業を続けてきた農家が自家増殖を禁止され、購入費を支払わされる事態となる可能性は十分にある。
継続審議となった先の通常国会で亀井亜希子衆院議員(立憲民主党)が「スピード審議ではなく、農水委員会で現地視察をするなど農家の声をよく聞くことが不可欠」と、徹底した審議を求めたのはこのためだ。12月5日までと会期が短く、コロナ第三波で現地視察も困難になりつつある臨時国会で拙速に採決に持ち込むほど、軽い法改定ではないともいえる。
臨時国会での審議はすでに始まっている。日本学術会議の任命拒否問題で「異論排除で国策ゴリ押し」の独裁的姿勢が露わになった菅首相が、農業者たちの批判や不安を無視して種子法改定をゴリ押しするのか否か。菅政権がどんな対応をしていくのかが注目される。
<文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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