ホイットニーや「ブルックリンの裏市長」らが「当選」。大統領選の影で開催されたロックンロールの殿堂

オハイオ州クリーブランドにあるロックンロールの殿堂

オハイオ州クリーブランドにあるロックンロールの殿堂
photo by MuzikAnimal via Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

 史上最大規模の得票数でバイデン勝利に終わった米大統領選。投票から1週間以上が経ったいまも、その余波はメディアを騒がせているが、その裏ではロックンロールの殿堂の授賞式が行われていた。  今年はコロナウイルスの影響で授賞式などは行わずに、受賞者の業績を称える特別番組が米ケーブルテレビネットワークのHBOで放映された。

史上最高の「国歌斉唱」を生み出した歌姫

 1986年に創設されたロックンロールの殿堂お茶の間を席巻した歌姫からヒップホップニューウェーブからインダストリアルグラムからウェストコーストまで幅広いアーティストの名前が並んだ、2020年の受賞者は下記のとおりだ。(参照:Rolling StoneNME)  T. Rex  The Notorious B.I.G.  Nine Inch Nails  Whitney Houston  The Doobie Brothers  Depeche Mode  日本で恐らく一番話題となるのは、やはりホイットニー・ヒューストンだろう。8年前(!)に突如亡くなってしまった彼女は、自身も出演した映画『ボディガード』からの「I Will Always Love You」(オリジナルはカントリーの大御所ドリー・パートン)で世界を席巻。累計で1億4000万枚以上のアルバムを売り上げ、各音楽メディアのシンガーランキングでも必ず選ばれてきた、まさに「歌姫」の代名詞とも言える存在だった。  1991年、伝説の「国歌斉唱」は、数あるスポーツイベントのハーフタムショーや試合前の国家斉唱のなかでも、ベストに数えられるパフォーマンスのひとつ。人種や性差を超えて、老若男女、お茶の間でも彼女が愛されてきたことの好例だ。

「ブルックリンの裏市長」がロックの殿堂にも当選

 同じく悲劇的な死を迎え、若くして伝説となったノトーリアスB.I.G.も、永遠のライバル2パックから3年遅れで、ついにロックの殿堂入りをはたした。  「ロックの殿堂なのにラッパーが入るの?」という野暮なディスは無用だ。これまでもランD.M.C.ビースティ・ボーイズパブリック・エネミーなどが殿堂入りをはたしてきたが、いずれもヒップホップシーンのみならず、あらゆるジャンルの影響を取り入れ、また影響を与えてきたアーティストばかり。  なによりビギーに関しては、ドラッグの売人から歴史上最高のリリシストと呼ばれるまでの生き様そのものがロックだろう。ショーン・コムズとタッグを組みメロウなトラックと巧みなワードセンスで頂点に立つ前は、ストリートでフリースタイル巧者としても名を轟かせてきた。まさに叩き上げであり、「ブルックリンの裏市長」というニックネームがつくのも頷ける。  リモートで行われた今回の授賞式では、ホイットニーとビギーの家族が登場。過去の秘蔵映像などで、殿堂入りが祝われた。
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新世代のバンドやハリウッドスターも祝福
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