「とはいえ、ベトナム人女性の場合、一部のタイ人女性のように本国でもゴーゴーバーなどで働いていた『プロ』出身の子なども少ないため、コロナ以前はそこまで爆発的に増えてはいませんでした。急増したきっかけはやっぱりコロナだったと思います」
東京都西部の某市にある店で働くドンさん(仮名・20歳)は、風俗店で働き始めたきっかけについてこう語る。
「コロナの前は、普通に飲食店で働いていました。でもコロナで仕事が無くなって困っていたら、同じ学校のコからこういう仕事の話を聞いて、それでやることにしました」
もちろん、「留学」とはいえ、ビザのための「留学」であることも少なくない。そのため、アルバイトも留学ビザで働ける上限を超えて就労していたのは事実だが、そんな生活の中でも日本語検定を取得して、いずれは真っ当な仕事を目指していたという。
「彼女たちが可哀想なのは、こうした風俗店の認識が浅い子ほど、ゴムなし挿入などを客から強要されたりする子も少なくない数いて、すぐ辞めてしまうか、数ヶ月でどっぷり風俗嬢となってしまうか、どちらかでした」
中にはストーカーまがいの行為にあうこともあったという。
「日暮里の店で働いていた私の友達は、仕事を始めて数日経った時に、お客さんに盗撮されてしまい、それ以降は怖くて何度も確認するようになったと言ってました。他の友達も、最初はいいお客さんだと思ってLINEを交換したら、だんだんプライベートのこととかしつこく聞くようになって、その内、お客さんとして来ていない日に、勝手にレンタルルームの前で待ち伏せしたりするようになって、怖がってやめてしまいました」(前出・ドンさん)
「実際、ビザの資格外活動とかバレると強制送還になるってのは客側も知っています。彼女たちに本気で惚れる人も少なくありませんが、立場が弱いことを知っていて、レイプまがいのことをする客や、失恋するとその腹いせに警察に密告するというケースも少なくないようです」
もちろん、ビザの資格外活動は違反だ。そして、彼女たちを雇うことも入管法違反だけではなく、倫理的な問題点も少ない。
だが、コロナ禍で仕事もなくなり放り出された彼女たちに、日本の行政がなんら真っ当な支援の手を差し伸べることがなく、頼るところがそこしかなかったのもまた事実だ。
こうした事実から目を背けて、「外国人の犯罪」と言う側面を殊更に強調するような「逮捕・摘発PR」を続けているようでは、問題は何も解決しないどころか、人権無視とレイシズムとセクシズムが横行する日本の現状が世界に知れ渡るだけなのではないだろうか。
<取材・文/大平梵骨>
フリーライター。成蹊大学法学部在学中に渡米。その後なし崩しに退学し、風俗情報誌の編集部に滑り込みキャリアスタート。興味分野は街場の風俗から陰謀論やオカルト、疑似科学から格闘技、運動生理学まで