「肌感覚で町民の過半数が賛成していることがわかる」と暴走する町長
講演を主催した住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」の吉野寿彦・共同代表(水産加工会社社長)
このように住民の声を聞き流しておきながら、
「肌感覚で町民の過半数が賛成していることがわかる。だから応募した」とまで豪語する“暴走町長”に対して、「町民の会」は文献調査応募の賛否を問う住民投票に向けた署名活動で対抗した。
必要な署名数に達したため、住民投票を実施するか否かを決める条例の採決が11月13日に行われることになっていた。そんな緊迫した状況の中、
「地震大国・日本に最終処分場の適地はない」と断言する小泉元首相が講演を行ったのだ。
「名前が通った元総理が来てくれたことの意味は大きい」「助け舟を出していただいた」と吉野氏は感謝している。実際、道内のテレビ各局は11月3日から翌日にかけてニュースで小泉元首相の寿都講演を流し、『北海道新聞』などの新聞各紙も翌日の朝刊で報じた。海外の最終処分場の状況さえ知ろうとしない片岡町長に対する疑問が、さらに強まる講演となったのは確実だ。
菅政権・北海道電力が再稼働を目指している、北海道古宇郡泊村の泊原発
そんな唯我独尊型の町長への風当たりは強くなりつつある。町内の観光関連業者からは
「町長が文献調査表明をして以降、『もう寿都町には泊まらないことにした』『寿都が気に入って、ふるさと納税をしてきたが、もうしない』というお客さんもいます」といった実害を訴える声が出ているという。
「洋上風力発電に乗り出すための財源」と町長が説明していることに対しても、
「町ですでに風力発電をしているのだから、その利益を積み上げて洋上風力発電に新規展開ができるはずだ」という批判がある。
さらには
「そもそも町長の給料も退職金も、周辺自治体に比べて高い。地域振興にマイナスとなる核のゴミ捨て場の文献調査よりも、町長自身の『身の切る改革』のほうが先決ではないか」といった批判も流れ始めているというのだ。
住民投票条例の採否や片岡町長の言動など、寿都町の動向から今後も目が離せない。
<文・写真/横田一>