ロックダウン下で目にした民主主義の力。ポーランドの中絶禁止反対デモに参加してきた
冷たい雨が降るなか大勢の人々が街に繰り出し、プラカードを掲げながら権利を叫ぶ……。コロナショックのさなかに「民主化運動以来」とも言われる大規模なデモが発生しているのは、ポーランドだ。
これまで当サイトでも紹介してきたように、ポーランドではここ数年、人工妊娠中絶を極度に制限する法案がたびたび取りざたされてきた。そのたびにデモや議会での激しい反対によって法案は阻止されてきたのだが、ついにどう法案が可決され、先月末にはワルシャワを中心に最大規模の集会が行われたのだ。
中絶禁止法案を巡ってはSNSなどでも活発に議論が交わされ、メディアでも連日デモの様子が報道されていた。現在、ポーランドでは秋のコロナショックが押し寄せており、1日に2万人近い感染者が出ている日もある。飲食店などは再びデリバリーなどに限定され、人通りは目に見えて減っているが、それだけに今回の大規模デモの様子は衝撃的なものだった。
筆者が暮らしている中世都市トルンでもデモが行われており、本項ではそのただならぬ空気をお伝えしたい。
デモが行われたのは夕方18時から。あたりはすっかり暗くなり、あいにくの雨模様となったが、次々と人々が世界遺産にも登録されている旧市街に向かっていく。
パッと見の印象では、参加者の多くは20代の女性だが、小さな子どもを連れた女性や「男性もデモを支援します」と書かれたプラカードを持った男性の姿も少なくない。いずれも2〜3人のグループで参加している人が多かった。コロナが猛威を奮っていることもあり高齢者の姿はほとんど見当たらないが、別な状況だった場合、保守的と言われる高齢層がどのような反応をしたかは気になるところだ。
デモの参加者が集ったのは、ランドマークとなっているコペルニクス像の周辺。その側には何台ものパトカーが停車していたが不穏な空気はなく、平和的な雰囲気だ。
唯一、不安を感じたのは、市庁舎を挟んだ反対側にある教会の周辺だ。ポーランドでは今回のデモを受けて、過激化した参加者が教会に押し入ろうとする事件が発生。そのため、各地でサッカークラブのサポーターたちが「人の壁」を作って教会を取り囲む事態に発展したのだ。
ポーランドのサッカー界は長年フーリガンの問題に悩まされており、無関係の市民への暴力事件も少なくない。そんなサポーターが介入してきたことによって、デモ参加者との衝突が発生したケースもあったようだ。
女性を中心とした参加者のすぐ近くに、ミリタリーブーツや迷彩のパンツを履いた男たちが集まっているのは、傍目に見ても異様な光景であったことは間違いない。
ロックダウンでも示される「民意」
参加者の中心は20代女性
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