情報漏洩に騒音問題。新しい働き方で生じた「シェアオフィス・トラブル」
スタートアップやフリーランスの間で重宝されていたシェアオフィスだが、コロナ禍で状況が一変しているという。リモートワークの普及で一般の会社員が仕事場を求めて殺到したからだ。現場で起きるトラブルとは!?
コロナ禍をきっかけに業種を超えてリモートワークの動きが広がるなか、成長分野として期待されているのがシェアオフィスやコワーキング・スペースだ。
料金体系は各社さまざまだが、デスクやWi-Fiからコピー機、フリードリンクなどが備えられたスペースを、月々数千円から数万円の会費で好きなだけ利用できるというものが多い。個人で契約することもあれば、会社が会費を負担してくれるケースもある。
シェアオフィスは新たな職場として注目されているが、コロナ禍により利用者が増えたことでトラブルが増えているのだという。リモートワーカー歴7年のウェブデザイナーは言う。
「コロナ前までは、どこのシェアオフィスも、静寂を好むノマドワーカーばかりでタイピングの音だけが静かに鳴り響くだけでした。ところが、コロナで人口密度が高まり、一気に騒がしくなった。特に大企業の社員と思しき連中は、共有スペースで大きな声で電話したり、会話するヤツらが多い。何度か注意したことがありますが『何がいけないの?』という態度。大企業のヤツはオフィスが広いので、騒音の中での仕事は慣れているのでしょう。キーボードを叩く音もデカいし、迷惑です」
別の利用者によれば、騒音が原因で怒鳴り合いの喧嘩になることもしょっちゅうだという。さらに手に負えない連中もいる。リモートワークのコストを抑えようとするケチケチ会員たちだ。
「私が利用しているオフィスは会員一人につき同時に3人までゲストを呼ぶことができるのですが、1人分だけ料金を払って毎日、仲間を呼んでたむろしている連中がいます。有料の会議室を利用するのを避け、共有スペースでミーティングしていたりする。ある不動産会社の営業チームと思しき一団は、共有スペースで顧客の個人名を読み上げたり、個人情報保護という概念も皆無のようです」(前出のウェブデザイナー)
こうした、脇の甘い利用者を狙った情報窃盗は、シェアオフィスでは日常茶飯事だ。教育サービス企業に勤める男性社員は言う。
「営業訪問先の企業リストをエクセルで開いていたとき、後ろから写メを撮っているヤツがいた。注意すると逃げていったのですが、似たような話はけっこうあるんです。シェアオフィスで情報を集め、転売しているのでは」
SNS上では“人脈づくり”と称してシェアオフィスに潜り込み、同業者がどんなプロジェクトを計画中か探っていることを公言するIT関係者もいるほどだ。
さらに、もっと手の込んだサイバー犯罪の恐怖も潜んでいる。
「渋谷のあるシェアオフィスで以前、会員専用のWi-Fiと瓜二つの鍵なしのアクセスポイントがあったんです。気になったので受付に『鍵なしのAPもある?』と聞いたら『ない』と。どうやら誰かが近くで情報を盗み取ろうと偽APを立ち上げていたようです」(メーカー勤務の男性)
企業としてはこうした情報漏洩が最も神経を尖らせるポイントとなるが、どう対策をとっているのか。全国展開する日本リージャスの広報担当者は話す。
「当社はビルトインファイアーウォールによる、ビジネスレベルのWi-Fiおよび有線による接続を提供しています。利用者様の個人情報は契約時・一時利用時にお預かりしており、誰がいつどのスペースを利用したかについて把握しております。」
利用する際はこうした対策をしている会社を選びたいが、一般社団法人損害保険協会によると、保険業界ではリモートワークでのサイバー攻撃被害に対応した新たな商品も出始めているという。
こうした問題に加え“招かれざる者”の存在もある。最近、世間を賑わせている持続化給付金の不正受給でも、シェアオフィスが舞台となる例があるというのだ。『ルポ 新型コロナ詐欺』(扶桑社刊)の著者・奥窪優木氏が話す。
「私が取材した、不正受給グループに名前を貸したある地方在住の学生はSNSで勧誘されたのちに品川のシェアオフィスで業者と面談していました。新幹線駅直結のオフィスビルの高層階にあり『こんな立派な場所にオフィスがあるなら間違いない』と信用してしまったそうです」
コロナ禍の利用者増でトラブルも増加
シェアオフィスで情報を集め、転売する輩も?
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『ルポ 新型コロナ詐欺 経済対策200兆円に巣食う正体』 誰が新型コロナで暴利を得たのか? |
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