情報漏洩に騒音問題。新しい働き方で生じた「シェアオフィス・トラブル」

シェアオフィス

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商談や面接などさまざまな用途で使用されるため、応接スペースの取り合いも頻繁に起きている

オラオラ系マルチがいつも威嚇してくる

 さらに、報告例が多いのが「マルチ商法の巣窟となっている」という指摘だ。奥窪氏が続ける。 「仕事柄、シェアオフィスをよく利用するのですが、コロナ後にはマルチ関係の面々に遭遇する率が増えました。幹部同士でミーティングしていることもあれば、新規勧誘の説得をしていることもある。彼らは大きな声で『アップライン(上位会員)』や『スピルオーバー(獲得会員を自身の下部につけること)』といったマルチ用語を連発しているのですぐにわかります。彼らがこれまで拠点としていたファミレスやカフェなどが近年、相次いで『マルチお断り』になるなか、新たな拠点になっている」  マルチに関してはこんな話も。 「いつも応接席を占領しているオラオラ系のマルチ集団がいるんですが、僕が近くで作業していると威嚇してくる感じでワザとぶつかったり、舌打ちしてくる。本当にウザい」(フリーのプログラマー)  ちなみにシェアオフィス運営会社はどこも会員規約で「反社、マルチ、宗教」の入会はNGとなっている。しかし、多くは受付で必要書類に記入して支払いを済ませれば、特に審査などは受けることなく即会員になれてしまう。実態はほぼスルーというわけだ。  トラブルや問題が増えているシェアオフィスだが、労働社会学者の常見陽平氏は主張する。 「騒音トラブルなどが多いと確かに聞きます。以前からの住人であるノマドワーカーと新参者である会社員の軋轢を避けるために、運営する側も配慮していくべきでしょう。また情報管理においては、コロナ以前の日本企業のリモートワークは、主に育児中の社員など事情を抱えた人や、直行直帰の営業担当を想定したものでした。それがコロナ禍で全社員にリモートワークが一気に広がったので、環境整備が突貫工事になってしまった。安全なチャットツールやファイル共有の仕組み、さらに端末に極力情報を残さない仕組みなど、企業側が整備すべきです」  急成長するシェアオフィス業界だが、問題も山積のようだ。

オシャレなシェアオフィスの実態

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サラリーマン利用者の増加で、従来の利用者が迷惑を被るケースが増えているという

▼騒音 共有スペースにおいて、大声で電話や打ち合わせを行う新参リモートワーカーが多数。騒音の中で仕事をすることに慣れた大企業の社員であることが多い。同様に、衆人環視の中Zoom会議を行う猛者も少なからずいる。 ▼企業スパイ シェアオフィス利用者で意外に多いのが生命保険外交員。他社の外交員の電話や打ち合わせの内容を録音したり、PCモニターを盗撮したりして、顧客を奪うという行為も互いに行われているというから、まさにスパイ合戦だ。 ▼マルチ 主に渋谷周辺のシェアオフィスに3、4人のグループで出没し、他人の耳も気にせず作戦会議や勧誘行為を行っている。ドリンクコーナーで、ほかの利用者に話しかけて勧誘しようとする者もいて、迷惑がられている。 ▼詐欺師 一等地にある大型オフィスビルに入居するシェアオフィスは、情報商材や嘘の投資を扱う詐欺師の「箔づけ」として利用されることも。「こんなところに入居している業者なら信用できる」と考える情弱がターゲットだ。 ▼窃盗 SNS上では置引や窃盗被害の報告も散見される。代表的なのは電話やトイレで席を外した際に、財布やデジタル機器を持ち去られるというもの。データが詰まったPCが盗まれたら、会社から懲戒解雇の可能性も。 ▼Wi-Fi低速 仕事をさぼってオンラインゲームやネット動画に没頭するリモートワーカー、大人数のビデオ会議をする会社員のせいで、共有Wi-Fiの速度が低速化し、他の利用者の職務に支障が出るという状況も各所で生まれているという。 <取材・文/アズマカン 五月花子>
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