(引き続き、ネタバレ要素を含みます。十分ご注意ください)
また作中、竈門炭十郎(炭次郎の父)が鬼撃破のための重要な技の原型となる「ヒノカミ神楽」を踊る場面がある。それについてもこのように言及されている。
「原作では枝が8個ついた剣を使用していたが、アニメでは7つの枝がある七支刀に変更されていた。問題はこの七支刀が下賜品なのか朝貢品なのかという点だ。そして日本に渡ったとしても
韓国の文化的背景がある剣といえる」
こうした、“韓国式”解釈は一転、キャラクター考察においては愛情に満ち溢れるものとなっている。だが、一部キャラクターについては愛が暴走したのか(?)辛辣な記述もある。
そのうちの一人が炭次郎を鬼殺隊へと導く「
冨岡義勇」だ。
鬼殺隊の中で最強を誇る9人の隊士を「柱」と呼び、その中の「水柱」である冨岡は凄絶な過去の体験と、入隊経緯が特殊であることの後ろめたさから感情と言語表現を極端に抑制しており、そのせいで周囲としばしば衝突する。要するに「
コミュ障」のキャラクターである。
こうした点から韓国のネット上では愛情を込めて「少し抜けてる無口な人」を表す「
キブンイ」というあだ名で親しまれ人気が高い。
ほかにも、「本人は大多数の人間とうまくやれていると思っているが、師匠である鱗滝、炭次郎などの例外を除いた全ての人間と仲が悪い」
「よほど気がつくか、炭次郎のようなかいがいしさがなければ彼とは付き合えない」などとも言及されている。
さらに、作品の矛盾点を指摘するカテゴリではその言動の不可解さを「知的障害レベル」とまで言及され、「障害者キャラクター」に分類されてしまっており、ややイジリが過ぎている感じも否めない。
このようにナムウィキだけを見ると、ツッコミや無機質な評価が多いように錯覚するが、実際には韓国のファンのほとんどが掛け値なしの愛情と賞賛を送っている。
また影の一番人気キャラクターと言っても過言ではない「
サイコロステーキ先輩」は日本の呼称を踏襲して「
キューブステーキ(※サイコロステーキの意)先輩」と呼ばれ、ファンによる韓国語吹き替えまで制作されるなど日本同様の盛り上がりを見せている。
韓国の大手書籍通販サイトでもランキング上位を占め、多くのレビューが付けられている
大手書籍販売サイトのレビューでも「とても面白いです」「泣ける」などというコメントが多数並び、おおむね肯定的に評価されていることは事実だ。
映画が公開されれば、こうした熱が一層盛り上がるに違いない。
<文/安宿緑>
ライター、編集、翻訳者。米国心理学修士、韓国心理学会正会員。近著に「
韓国の若者」(中央公論新社)。
個人ブログ