多様なメンバーに対応するためには、各人を細かく分析するのは悪手だった!

簡単で大雑把な仕組みこそが実践に役立つ

 このように申し上げると、そのような大雑把な見当のつけ方でよいのか、もっと確実にしっかり分析する必要があるのではないかという反応に接することがある。私は、逆に細かく分析してはならない大雑把に見極めるべきだと考えている。  調和志向の人にほかの人と協力しないでチャレンジしろといっても、ピンとこないだろうし、逆に牽引志向の人にリスクやバランスを考えろといっても抵抗感を与えることになりかねない。このような真逆のコミュニケーションが、実は世のなかにはびこっている。これが対立を激化したり、ハラスメントの温床になっていると思えてならない。    真逆のコミュニケーションを回避するためには、6つのなかのどのモチベーションファクターの持ち主かを厳格に見極めることまでは必要がない。牽引志向と調和志向のどちらが強そうか牽引志向のなかのどれか調和志向のなかのどれかを見当づけるだけで十分だ。  牽引志向のなかの目標達成と自律裁量が強そうだ、調和志向の中の安定保障と公私調和の傾向があるというように、2つのどれかが強そうだという程度の見極め方で十分だ。これで真逆のコミュニケーションを回避できる。この程度の見極め方で演習をすると、初対面の人との2分間で見極める人がほとんどだ。  もし、モチベーションファクターの傾向がわからなければ、モチベーションファクターに関してニュートラルに接すればよい。ニュートラルに接するならば、少なくとも真逆のコミュニケーションにはならないからだ。  どのモチベーションファクターが強いか、2日も3日も悩んでいたら、実践に役立たない簡単な区分で、大雑把に捉えることこそが大事なのだ。  世の中には、ビジネスパーソンの行動や発展段階をグルーピングするさまざまなツールがある。そして多くのツールが細かく分析して精緻な結果を導き出そうとしている。それが逆に実践を妨げているのではないか。

モチベーションファクターは対話の中で見極めよ

 質問:相手のモチベーションファクターをどのように見極めればよいか  相手のモチベーションファクターは、どのようにして見極めればよいのでしょうか? 相手にわざわざ、モチベーションファクターのキーワードを選んでもらうことなどできません。  回答:対話のなかで見極める  日々の対話のなかで見極めていくことがお勧めです。チャレンジすることが好きなのか、安定的に進めたがるのか、相手の発言がどのモチベーションファクターに当てはまるかの見当をつけていくのです。  最初から厳密に、どのモチベーションファクターなのかを見極めようとすると、時間もかかりますし、なかなか確証が持てないものです。大事なポイントは、「だいたい牽引志向のどれかだな」「少なくとも牽引志向ではなく、調和志向の傾向が強いな」「目標達成か地位権限のどちらかではないか」という程度に、おおまかに見当をつけて直接的なコミュニケーションのなかで絞り込んでいくことです。  あれこれ考えて、何もコミュニケーションしない、アクションしないということでは、実践に役立たない知識ということになってしまいます。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第213回】 <取材・文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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