3人目は失恋をキッカケにお酒にハマってしまったKさん(32歳・男性・建築)だ。
「付き合っていた彼女が浮気していたんです。それも知り合いと……。それまではどちらかというと落ち着いた性格だったんですが、
嫌なことを忘れるために夜遊びで憂さを晴らすようになりました。
それが気づくと
家でも飲むようになってしまい、休みの日は昼から飲むように。当然、
寝不足や
遅刻が続くようになり、
お酒が残ったまま仕事に行くこともありました。
実家が遠いので家族には相談できませんでしたが、
助けになったのは職場の友人です。『
酒臭いし、お前飲んでるだろ? そんな状態じゃクビになるぞ』と、“説教”してくれたんです。それまで
心のなかで誤魔化し続けていたんですが、そこでハッと
『問題がある』と気づけたんです」
今でもお酒は飲むが、酒量は激減。友達の目もあり、酔って出勤するようなことはなくなったという。
さて、読者の皆さんは日常生活で家族や友人からこのような相談、告白を受けたことはあるだろうか? 冒頭で述べたように、仮になかったとしても、それで
周りにそういった問題を抱えた人がいないということにはならない。恥ずかしい、知られたくない……。そんな理由で苦しさを胸に押し込んでいる人が身近にいる可能性は十分ある。
周囲の人間が異変を感じても、
正面切って問題がないか聞きづらいという環境もあるだろう。しかし、依存症患者の多くは、
薄々問題に気づきながらも、なかなか自覚できないという面もある。今回紹介したケースのように、
周囲からの言葉がキッカケで向き合うことができたという例もあるのだ。
筆者も、こういった依存症患者との出会いを通して初めて、「
あの人は実は依存症だったんじゃないか」と振り返ったことが何度かあった。在宅ワークの普及などで、そういった問題は
ますます可視化することが難しくなっている。しかし、無視したり、単なる「スキャンダル」と捉えるのでなく、
依存症は身近にあるということを知ることが解決への第一歩になるのではないだろうか。
臭い物に蓋をするのではなく、風通しのよい環境づくりが重要であると、ヨーロッパでの生活で気づかされた。
<取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン