住民投票直前。メッキが続々と剥がれ始めた「維新都構想」

嘘を嘘で塗り固める松井氏の「弁明」

維新のキャッチフレーズは「大阪の成長を止めるな!」

維新のキャッチフレーズは「大阪の成長を止めるな!」

 10月15日の会見で「『大阪の成長を止めるな!』という維新のキャッチフレーズはイカサマではないか」と聞くと、松井氏は「一度検証します」と回答したので、3日後の10月18日の囲み取材で再質問をすると、こう答えた。  「われわれ2011年から府市一体で準備してきているわけです。今の観光の話(外国人観光客)をスタートしたのは2012年の年末です。2011年に僕と橋下さんが(府市のトップに)なって、観光局をスタートさせたのは2014年4月です」(松井氏) 「松井一郎・大阪府知事と橋下徹・大阪市長(いずれも当時)」の維新府市一体行政は2011年にスタートしたが、準備期間が必要だったので効果が出てくるまでの時間差(タイムラグ)が生じたというのだ。  そこで、前回の記事で示した「2011年~16年の年平均成長率」に加えて、「2014年~16年の年平均成長率」も同じように計算してみたが、全国平均以下であることに変わりはなかったのだ(大阪府作成の2019年12月版「データで見る『大阪府の成長戦略』」の数字を使用)。 <2014年~16年の年平均成長率> 大阪府 +0.37%  全国 +0.60% <2011年~16年の年平均成長率> 大阪府 +0.58%  全国 +0.95%  松井氏の回答(準備期間によるタイムラグ)では、「二重行政解消の大阪府の成長率が二重行政が残る全国平均以下」という逆転現象の謎を説明することはできないのだ。嘘を嘘で塗り固めるような維新の詐欺的商法について私は、10月22日の会見で松井氏に「2014年~2016年」の成長率の数字を紹介した上で、先の例えを使った再々質問をした。 「二重行政を解消した強力エンジンを積んだ大阪のバーチャル都構想のほうが、二重行政を積んだぽんこつ車と競争したら、なぜかぽんこつ車のほうが勝っちゃったと。これは維新の強力エンジンはやっぱりいかさま、まがい物で、詐欺的商法をやっているようなイメージにも思えるが、これをどう理解すればいいのか」「(地方を含む)47都道府県の平均よりも下回っていた」  すると、松井氏は“復興特需牽引説”を持ち出してこう謎解きをした。 「地方の成長率の中には建設、宿泊、飲食とかも入っています。で、一番これで地方の平均(成長率)を上げてるのが宮城、岩手です。これは当時、震災で復興で建設の需要として、公共工事がもう、すごいお金が投入されてずっときています。だから防潮堤とか、ああいう土木系工事。これが宮城でプラスの13.9、岩手はプラスの7.6」「これで平均すると、やはり地方平均がぐっと上がったということです」。  維新府市一体行政が始まった2011年に東日本大震災が起き、宮城や岩手などで復興需要が急増したことが全国平均の成長率を引き上げた結果、大阪を上回ることになったと松井氏は反論したのだ。

「震災復興特需牽引説」もやっぱり嘘

都構想の住民投票では賛成派と反対派がほぼ横一線の大接戦

都構想の住民投票では賛成派と反対派がほぼ横一線の大接戦

 しかし、この“復興特需牽引説”も“準備期間タイムラグ説”と同様、逆転現象を説明できる代物ではなかった。震災翌年の2012年には宮城も岩手も高い成長率を記録したものの、それ以降は右肩下がりとなり、2016年にはマイナスの成長率になるなど、両県の6年間の平均は2%台で、全国平均を1%程度引き上げたにすぎなかった。「地方平均がぐっと上がった」(松井氏)の説明は、一部のデータを針小棒大に紹介して全体的傾向を偽装するペテン論法(虚偽説明)といえる。 <2011年~16年の年平均成長率> 岩手県        +2.13% 宮城県        +2.98% 大阪府        +0.58% 全国平均       +0.95% 宮城岩手除く全国平均 +0.88%  復興特需にわいた宮城と岩手を除いた全国平均は「+0.88%」で、二重行政解消の大阪の「+0.58%」を上回っていた(福島県を入れても同様の結果)。復興特需と無縁の二重行政付のポンコツ車が、二重行政解消エンジンの“維新バーチャル都構想号”に成長スピード競争で勝ったことを物語っている。  紛い物の都構想に大金を投じさせようとする維新の詐欺的商法の実態が浮き彫りになってくる。と同時に、データの裏付けなき空論を繰り返す松井代表にも唖然とする。  カイロ大学首席卒業など嘘を嘘で塗り固めるのが得意の小池百合子都知事(『仮面 虚飾の女帝小池百合子』参照)と、松井氏が二重写しにもなってくる。都構想でバラ色の未来が到来するかのように語る維新の主張は、信憑性を徹底的に検証する必要があるのだ。都構想の住民投票の結果が注目される。 <文・写真/横田一>
1
2
仮面 虚飾の女帝・小池百合子

都民のためでも、国民のためでもない、すべては「自分ファースト」だ