「トリチウム水」では事態を見誤る。専制政治と言葉の置き換え<史的ルッキズム研究10>

放射能汚染水を海洋に投棄する方針

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 既に多くの識者が指摘していることとは思いますが、さっそく菅政権が滅茶苦茶です。  今月、菅首相は、日本学術会議の改選メンバーのうち6名を任命拒否し、学術会議法に違反するという事件を起こしました。内閣はこれを、「総合的・包括的に判断した」結果であると言うのですが、彼らの「総合的・包括的判断」には法令を守るという基本的な前提が抜け落ちているようです。自民党の国会軽視は安倍政権時代からずっと続いていますが、ついに、明文化された法律までも無視するという暴挙にでたわけです。  さて、政権の中枢で不法行為が起きているなかで、もうひとつ重大な事件が起きています。福島第一原発の放射能汚染水の海洋投棄問題です。菅政権は、福島第一原発の放射能汚染水を海洋に投棄するという方針を固めました。

原子力緊急事態宣言下で内閣府の全権掌握が続く

 この件については少し説明が必要です。   日本の原子力行政は、民主的な手続きを経ない専制的・独裁的な方法で行われています。この手法を決定的なものにしたのは、2011年の福島第一原発事故でした。この年、内閣府は原子力災害特別措置法に基づく「原子力緊急事態宣言」を発令しました。  原子力緊急事態宣言が発令されると、原子力を規制する原子力基本法は凍結されます。かわりに、内閣府の政令による新しい規制基準が新設されていきました。この新しい基準は、立法府(国会)の審議を経ることなく、内閣府の一存で決めることができます。1キロあたり100ベクレルの汚染食品を食べてもよい、とか、空間線量率年間20ミリシーベルトの汚染地域に生活してもよい、といった新基準は、立法府の審議を経ることなく、内閣府だけで決定されたものです。  原子力緊急事態宣言は時限的なものではありません。内閣府が判断するまで宣言は解除されません。つまり、11年以降、内閣府はずっと放射能に関する全権を掌握してしまっているわけです。  経産省は、原子力事故という大失態をおかしたあと、任を解かれるのではなく反対に、国会から追及されないフリーハンドを手に入れたのです。緊急事態宣言下の原子力行政は、ブレーキのない専制状態です。これは三権分立の原則を失効させてしまう、きわめて違憲性の高い状態だと思います。
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言葉の置き換えと認知の歪み
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