「ランボルギーニが欲しい」の一念で30代後半未経験業種に転職!「好き」がこじ開けた転職への道

腕前と熱意が認められ、新事業部の部長に任命される

 こうして、無茶ともいえる依頼を見事こなし、納期までに7万粒のスワロフスキーをランボルギーニに貼り付けた粟田さん。  その仕事ぶりと、ランボルギーニのカスタムにかける熱意に感動した諸星さんに、「うちのカスタムカーショップで、スワロを貼るアート事業を始めたらどう?」という話を持ちかけられる。 「まさかスワロを扱うことが仕事になるとは、思ってもいませんでしたね。しかも、お店にアート事業部門があるわけではなかったので、完全に新事業。不安もありましたが、大好きなランボルギーニに関わる仕事ができるということ、そしてなにより、自分の熱意を信じて新事業を任せてもらえたことが嬉しくて、『最高!』と思った気持ちのほうが強かったです。今では、覚悟を決めて兵庫から出てきて良かったと思っています」  現在はランボルギーニを始めとする車はもちろん、スマホケースやアイコスケースなどにも装飾を施しているという。生まれ持った手先の器用さはもちろんだが、ランボルギーニに対する情熱と類稀な行動力が、好きなことを仕事に繋げられた要因だろう。 「確かに、熱意は人よりもあるかもしれません。今の会社にお世話になると決まった時、会社から一番近い家を借りようと思ったのも、仕事への熱意からです。職場の近所であればあるほど、依頼が入ったときに素早く対応できますからね。会社が入っているビルの上はマンションになっているのですが、自分の意思で、そのマンションに部屋を借りています。それぐらいの熱意や気合があれば、好きなことが仕事になると思いますよ」

大きな夢の実現か、恋人との結婚か……突きつけられる現実

 順風満帆なように見える粟田さんだが、1つだけ気がかりがあると話す。兵庫にいる彼女の存在だ。 「東京と兵庫で遠距離恋愛になってしまい、我慢させてばかりで申し訳ない気持ちです。最初は、『東京で新しい仕事を頑張って!』と応援してくれていたのですが、今では『兵庫に帰ってきてほしい』と言われます。近々結婚について話す予定ですが、どうなることやら…」  彼女の訴えは胸に響くものの、粟田さんの気持ちは、自身の“夢”を叶えたいという方に傾いている。 「実は9月の頭に、ランボルギーニの実車全体に100万粒のスワロフスキーを貼るという作業を終えたんです。総製作期間は4カ月。実車全体にスワロフスキーを貼ることはかねてからの夢だったので、達成感は一入でした。そして、その夢が叶ったら、今度は別の夢ができたんです。それは、ルイ・ヴィトンのショーケースと、世界にも5台程度しか存在しない“ランボルギーニ・ヴェネーノ”の実車全体に、スワロを貼るという夢です。もちろん、自分のランボルギーニを購入する夢も叶えたいと思っていますが、彼女との今後を考えると、折り合いをつけるのが難しいですね…」  転職が困難になるといわれる30代後半でも、持ち前の熱意でやりがいのある仕事に再就職できた粟田さん。新たな夢も、愛妻も、もちろんランボルギーニも、手に入れられることを祈るばかりだ。 <取材・文:鶉野珠子>
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