中学校の教科書に採用された日本語プログラミング言語「なでしこ」。母国語でプログラミングができることの「意味」

プログラミングの言語ハードル

 私自身、プログラミングを教える立場に立ったり、解説する立場になったりすることがあるのだが、初心者に教えることの難しさを感じることが多々ある。  多くのプログラミング言語は、歴史を経ることで複雑化している。また、大規模開発向けのルールが大量にある。それらは「ただ何かを動かしたい」という初心者にとっては、難易度を上げるだけの要素になっている。  また、開発環境を作ることが大変なことも多い。ぱっと用意して、ぱっと動かして、ぱっと確かめるといったスピード感では、プログラムを書けないことが多い。  こうした様々なハードルを乗り越えながら、プログラムを学ぶことになる。  プログラムを学ぶには、「書いて動かして」を繰り返さなければならない。またその前に、ドキュメントやサンプルプログラムを「読む」という行為も必要になる。この「読む作業」が、プログラミングの内容によっては8割、9割を占めることもある。  ドキュメントやサンプルプログラムが日本語で書いてあれば、こうした「読む」難易度は大きく減る。そして「書いて動かして」に集中できる。  現実の世界でも、電化製品を買ってきて説明書を読まない人は多い。プログラミングの世界でも、学習に臨んでマニュアルを読まない人は多い。また、見慣れない英語で書かれているという理由で、拒否反応を起こす人も少なくない。  日本語でプログラムが書いてあり、見た瞬間に「書いてあることの意味が分かる」というのは大きなアドバンテージだ。  プログラミング言語は何か1つ学べば、2つ目以降の修得コストが劇的に下がる。「これは、こういうことだな」と、頭の中で置き換えができるようになるからだ。  「なでしこ」のバージョン3のプログラムは、Webページ上でも実行を確認できる(なでしこ3)。最も簡単なプログラムは『「こんにちは」と表示』である。同じことを、Webページでよく使われているJavaScriptで書くと『console.log(‘こんにちは’)』となる。初学者にとって、どちらが分かりやすいかは明白だろう。  アンケートによると、「なでしこ」は40代、30代の利用者が多い。大人だからといって避けるのではなく、プログラミングの入り口として、まずは触れてみるのもよいのではないか。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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