――AV男優だったことは息子さんは知らないとうことですが、いつか明かすつもりはありますか。
「いや、AV男優については全く恥ずかしい仕事だと思ってますね。絶対に人には言えない。でも、いつの日かバレる可能性もあるから、男の子だし。友達から『お前の親父AV男優じゃない』って聞かれる、言われるよりは言おうかなと思ったけど、何か女房が反対するから一応黙ってはいるよね」
沢木自身が「恥ずかしい仕事」と話すのは驚きだ。記者としては正直なところ、沢木はあっけらかんとして開放的な印象であったため、このような答えが返ってくるとは予想だにしなかった。
続いて、、妻のことについても尋ねた。
――奥様は、結婚したあとも(AVを)続けていくことに対して理解はされていましたか。
「それは別に何も。うちの奥さん何にも言わないから、基本的には。まあ、知り合った時から俺のことを知ってたし。女性誌とかけっこう出てたから、女のコでも知ってる人けっこういたんだよね。そういうのもあってのお付き合いだったし。まあ結婚の時はちょっと考えるところもあったみたいだけど。うん、そりゃあね結婚するとなったらね……でもまあ、結果的に一緒になってるよ」
-結婚生活は何年くらいでしょうか?
「25年かな」
-それで、お子さんがひとりいて。でもやはり自分の旦那さんがAV男優ってのはなかなかないことですよね(昨今では、ブロガーのはあちゅう氏と結婚したしみけん氏がいる)。
「なかなかないね。けっこうさ、男優は女優と結婚してるヤツが多いから。だから関係ない人と結婚してる人って、誰かいたかな……。ただね、女優と結婚すると離婚する確率も高いんだよね。やっぱり仕事知っちゃってるから。普通は何言ったってバレないじゃん、外で何やってるかって。今日は泊まりロケだとか、泊まりロケがすげえ続くとか言えば普通の奥さんにはバレないけど、同業者だとバレるから」
父として、そして家族としての沢木は「性を追い求める男」とは違う印象を受けた。特に息子への思いはガンが発覚してなお強まったようである。何かを残してあげたい、と沢木は何度も語った。
具体的なAV業界での経験についても沢木は語ってくれた。
――若手時代の時の出演料って、一本おいくらくらいだったのでしょうか?
「1本1日、僕ら1日っていうか1現場単位なんで。初めての時はオナニーしてる女のコを見るだけの役で2万円だった。2回目の現場では絡みがあって3万円。3万円がだいたい1年~2年続いてあとは自分で上げていく。当時は最高で5万円だったから。てか俺の時は時代がよかったから、確か3~4年後にはもう5万円もらってたかな」
――自分で上げていくというのは、例えば「俺は5万円の男だぞ」とアピールすることですか。
「そうそう。先輩の男優が『俺は7万円だ』って言ったら、一気にみんな引いちゃったからね。仕事なくなっちゃう、言いすぎると」
90年代にAV黄金期が終わって以降、現在に至るまで業界の景気は下降の一途なのだという。先輩の男優が報酬を7万と要求はした時もすでにバブルは終わっていたころであった。
――沢木さんにとっての、代表作はありますか。
「事件じゃないけど、ハプニングがあったようなやつしか覚えてないんだよね。あまりにもいい女だから、突きすぎて女性器が壊れて血だらけになったことがあったね」
――男優生活のなかで『名器』はやっぱりありましたか。
「いましたけど、でもまあ(感じ方は)人それぞれだから」
――「ミミズ1000本」というのは本当にあるんですか。
「あるあるある。いやすごいよ、指突っ込めばわかる。すっごいザラザラ。もうヒダがすごい。ヒダがついてたり、あとはツルツルだったり。ツルツルは名器とは言えないけど」
――大きさとかも関係あるんですか。
「あるある。基本的に痩せてる人の方が気持ち悪い、というか気持ちよくない。たぶん肉がないから、そっちの肉も薄いんだろうね。だから痩せてるモデル系の子はたいてい気持ちよくない」
――じゃあ男性が気持ちいいエッチをしたかったら、ある程度ふくよかな女性を選ぶほうが良いということでしょうか。
「確定はできないけど、ふくよかなほうがいいかもしれない」
――若い頃から婦人服売り場の仕事だったり、セックスをしたかったという文章を見ると恋愛よりもセックスがしたかったということでしょうか。
「恋愛なんかしたいと思わない。全然したいと思わなかった、やりたかっただけ。付き合ってる人もいたけど、それはそれ。やっぱ新しい女を見るよね、そっちもいきたくなるし」
-AVの撮影においてもそうだったのですか。
「恋愛感情が芽生えた時もあったかな。好きなっちゃった時はあったかもしれない。会って、セックスして。『ああ、こいついいな』と思って好きになったことはあったかもしんないけど。でも少ないね基本的に。仕事は仕事」
後編では、沢木和也のガン闘病と「終活」の中身に迫っていく。
<取材・文:杉渕那音 取材/卯月雅之>