中小規模農家を廃業に追い込むことになりかねない改悪
種苗法改定に反対する山田正彦・元農水大臣(弁護士)
そんな危機的状況にある農家の生の声を紹介したのが、映画『タネは誰のもの』。山田氏はこの映画のプロデューサーをつとめている。
「種苗法改定の問題点を分かってもらうには、農家の生の声を映像にするしかないと思い、原村政樹監督に相談しました。そして北海道から沖縄まで一緒に回って、全国各地の現場で撮影をしたのです。菅首相がこれを見れば、農家を廃業に追い込むことになる改悪であることが分かるでしょうが」
10月16日にはこの映画の試写会が開かれ、山田氏と原村監督が対談もしたが、たしかに現場の農家の切実な声がいくつも紹介されていた。
完成披露上映会が決まった『タネは誰のもの』
栃木県大田原市の有機農家の古谷慶一氏はこう語る。
「農家を保護するための改正ではなくて、農家をやめなさいという改正になっている気がする。(タネは)ある特定の人たちが持つものではなくて、みんなのもの。地域で代々守ってきたわけで、それが一企業が持つのはおかしい」
鹿児島県種子島のサトウキビ農家の山本伸司氏も、種苗法改定でサトウキビ農家は壊滅すると危機感を募らせていた。
そして鹿児島から沖縄に至る離島の主要作物であるサトウキビが大打撃を受ければ、人口は激減し、「安全保障上も問題」という警告も発していた。中国が尖閣周辺への圧力を強める中、日本の離島防衛上も国益を損ねかねないというわけだ。
賛成派と反対派とのギャップが埋まらない中、臨時国会では「グローバル企業がタネの権利を独占、農家が壊滅的打撃を受ける恐れはないのか」「現行法で苗木の海外持ち出しを防げないのか」などについて徹底した議論が不可欠に違いない。
農家や消費者の懸念を十分に払拭しないまま、菅政権(首相)がグローバル種子企業の跋扈を許しかねない種苗法改定をゴリ押しした場合、冷酷無情な独裁的首相の“素顔”がさらに広まることになるだろう。臨時国会での論戦が注目される。
<文・写真/横田一>