メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称:アムロ)大統領(Photo by Hector Vivas/Getty Images)
メキシコ大統領がスペイン国王とローマ教皇に謝罪を要求
米国の影響力の強いメキシコで80年余り続いた右派2政党による政権に代わって、左派の
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(通称:アムロ)が2018年12月に就任した。アムロはこれまでの同国の大統領とは異なり、ベネズエラのマドゥロ、キューバのカストロ、ボリビアのエボ・モラレス、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデスらへの親近感を表明している。
その彼が、来年2021年がアステカの首都テノチティトラン(現メキシコシティ)の建設700年、スペインによる侵略500年そしてメキシコの独立200年を記念して
フランシスコ教皇並びにスペインのフェリペ6世国王に対し謝罪を要求している。
その理由を、
スペインがアメリカ征服の際に先住民に対し残虐、略奪、服従させたりした行為にあるとし、その謝罪をローマ教皇とスペイン王家に要求。そして彼らとメキシコ政府とが一緒になって先住民に謝罪すべきだとしたのである。
この要求を認めたアムロの書簡を、彼の夫人ベアトゥリス・グティエレス・ミュレールが携えて10月10日、フランシスコ教皇を謁見した。
実は、この要求は今回が初めてではなく、2019年3月にも同様の要求をしている。アムロは征服には剣と十字架でもって虐殺と弾圧をおこなったとした上で、スペインの国王に対して「両国は和解すべき時が来た。2021年は歴史的な和解の年だ。その前に貴国は謝罪すべきで、我が国も独立記念の年に先駆け先住民に与えた弾圧に謝罪する意向だ」とアムロは昨年3月に書簡にてそれを表明した。〈参照:「
RTVE」〉
しかし、これまでメキシコの大統領からそのような要求をスペインは受けたことは一度もないとしている。国王に代わってスペイン政府は、先ず始めにアムロがフェリペ6世国王に宛てた昨年3月1日付の書簡を公開したことを遺憾に思うということを表明した上で、内容を拒絶することを以下のように表明した。
「500年前にスペイン人が現在のメキシコの地に到着したことを現代に照らし合わせた形で判断されるべきものではない。我々、兄弟国は共通の遺産を有し、また並外れたプロジェクトをもった自由の国として我々の過去への怒りを伴うことなく、その一方で建設的な観点に立って分け合って来た」
確かにこのアムロの要求は、外交的にタイミングが悪かった。この要求が発表されたのは、フェリペ国王がメキシコを訪問した3か月後のことで、しかもアムロとサンチェス首相が会見を持った2か月後のことなのだ。
また、スペイン側からすると、メキシコの独立には神父ミゲル・イダルゴ・イ・カスティーリャが多大の貢献をしたことや、1936-1939年のスペインの内戦によって、メキシコに亡命したスペイン人の共和国支持者が、同国の産業発展に貢献したこともアムロには思慮に入れてもらいたかったのかもしれない。