「他人の心の中を自分のものさしで測るのはやめてほしい」24歳のうつ病患者が語る、4年間の苦悩

病院へ行くも診断名は告げられず

「大学2年生の秋頃には、漠然と『もう無理だ』と考えることが増えました。自殺したいとは思わなかったけど、『生きてても意味ないな』っていつも思っていました」という佐藤さんは、ついに病院へ行くことを考え始める。 「住んでいた地域のメンタルクリニックに電話したら、『初診だと1か月後の診察になります』と言われました。『そんなに待つんだ』と驚きましたが、『じゃあいいです』と断ってしまったらずっと行けないと思ったので、『1か月後で良いのでお願いします』と予約をしてもらいました」  そして予約の日、メンタルクリニックを訪れた佐藤さん。初診は20分程度だった。 「急に大学へ行けなくなってしまったこと、頭に靄がかかっているような感じがすること、食欲があまりないことなどを話したと思います。血液検査もしました。『では不安を軽くするお薬と、食欲が出るお薬を出しますね』と言われてその日の診察は終わりました。血液検査の結果が出ると、『鉄が全然足りていないので鉄を飲んでください』と鉄の錠剤も処方されました」  そこでうつ病という診断はされなかったのだろうか。 「抑うつ状態とは言われましたが、『うつ病』とは言われませんでした。全く動けないってほどではないし、まあうつ病ではないんだろうなとは自分でも思っていたので特に驚きはしなかったです」

カウンセリング中に号泣することも

「処方された薬を飲み、病院に併設されているカウンセリングルームで新しくカウンセリングを受け始めた」という佐藤さん。どのような変化があったのか。 「薬を飲み始めたら、海の底にいるような…もう抜け出せないんじゃないかと思うような絶望に陥ることはなくなりましたが、相変わらず楽しい、嬉しいと感じることはひとつもありませんでした。新しいカウンセリングでは、なるべく前と同じ状況にはしたくなかったので話すことを事前にある程度考えたり、ふとした瞬間に感じた些細なことを書き留めたりして話していました」  カウンセリングに通い続けるうち、段々と話せるようになったと佐藤さんは話す。話す中で自分が悲しかったことに気がつき、号泣することもあったそうだ。 「自分の感情を無意識に抑圧していたから、靄がかかっているみたいになっていたんだと気がつきました。大学に友達も多くなかったし、一人暮らしなこともあってほとんど人と話す機会がなかったからどんどんふさぎ込んでしまったのかもしれません。担当の臨床心理士さんが『あなたは怒りや悲しみを良くないものだと思って押さえつけてるのかもしれないけど、時には怒りや悲しみがあなたを守ってくれるんだよ』と言ってくれたのを今でも覚えています」  ということは、カウンセリングを受けることで症状は回復に向かったのだろうか?佐藤さんから返ってきたのは「そうとは言えない」という答えだった。 「確かにカウンセリングが終わったあと一時的に気持ちがすっきりすることはありましたし、頭の中を少し整理することができたとも思います。でも金銭的なこともあって2週間に1度しか通えませんでしたし、ガス抜きくらいにしかならなかったかな」  カウンセリングは基本的に保険適用ではないため、1回あたり約7000円〜1万円5000円の料金がかかる。週に1回、もしくはそれ以上のペースで通うのが望ましいとされているが、お金のない一人暮らしの学生には難しかったようだ。
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引っ越しを機に転院、うつ病と診断される
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