「セクシー」発言の“元ネタ”フィゲーレス氏、小泉進次郎環境大臣を一刀両断

「セクシー」発言は、言葉尻だけが利用されてしまった

クリスティアーナ・フィゲーレス

クリスティアーナ・フィゲーレス元国連気候変動枠組条約締結国会議事務局長。2015年のパリ協定合意の立役者と言われる。母国コスタリカで軍隊の廃止を宣言したホセ・フィゲーレス元大統領の娘

 元国連気候変動枠組条約締結国会議(UNFCCC)事務局長のクリスティアーナ・フィゲーレス氏がインタビューに答え、菅政権でも留任となった小泉進次郎環境大臣を痛烈に批判した。  フィゲーレス氏は、7月18日に収録されたオンラインインタビュー(主催:緑の党グリーンズジャパン)で、環境NGOのメンバーや大学生などの質問に対し、約1時間にわたって返答。「新たな石炭施設を増やす余地は、もはや地球上にはどこにもない」と、小泉大臣のお膝元・横須賀で進む石炭火力発電所の建設に異議を唱えた。  小泉大臣といえば、記者の質問に対する答えがしばしば“ポエム的”なことで注目されている。中でもグローバルな規模で注目されたのが、2019年10月の「セクシー発言」だ。  国連気候行動サミット時の記者会見で「気候変動のようなスケールの大きい問題に対しては、楽しくクールで、セクシーであるべきだ」と述べたニュースは、瞬く間に世界中に配信され、話題となった。  この時、「セクシー」と口にしながら小泉大臣が振り向きつつ同意を求めたのが、臨席していたフィゲーレス氏だった。というのが、そもそも気候危機との闘いにおける議論の文脈に「セクシー」という言葉を持ち込んだのが、フィゲーレス氏その人だったからだ。  筆者は、上述のインタビューイベントでフィゲーレス氏と直接話をする機会を得たので、この時の経緯について聞いてみた。彼女は、「私は記者会見の場にいただけですよ」とやや困惑気味に答えた。言葉尻だけが利用され、文脈がすっ飛ばされていたからだ。

小泉大臣の気候危機に対する態度はまったく「セクシー」ではない

石炭火力反対を表明したはずの小泉進次郎環境大臣

2020年1月21日の閣議後記者会見で、石炭火力発電反対を表明したはずの小泉進次郎環境大臣だが……(写真/横田一)

 フィゲーレス氏のいう「セクシー」とは、自身が提唱する「グローバル・オプティミズム(世界的楽観主義)」を構成する一要因である。  現在、人類は大変な危機に直面している。にもかかわらず世界は分裂し、共通の目標に合意できない。または野心的な目標を掲げ、大胆に行動しようとしない。このような悲観論に直面した彼女自身がそれを覆すため、国際組織の長として提唱した組織的意識改革論が「グローバル・オプティミズム」だ。  これは、単純に「若い世代も楽しんで参加できるような行動様式」などといった表層的な話ではない。むしろ、気候危機に対し断固たる決意を示し、「できない」という悲観論を一掃して、行動する組織や人を生み出す変革の態度のことだ。  その決意が、現実に持続可能な技術の革新を促進し、経済や投資のシフトを生み、発展途上地域のエネルギーに対するアクセスを容易にした。  それによって、より多くの人が持続可能なエネルギーや気候危機問題に関わるようになり、議論に消極的だった各国政府もついに重い腰を上げて、不可能だと言われたパリ協定が締結へと導かれたのである。(出典:TED) 「セクシー」は、あくまでそのような文脈を構成する一要素である。小泉大臣は、気候危機に真正面から立ち向かい、さまざまな組織内外の抵抗や、メディアからの意地悪な質問に対して、断固たる決意を示したことがあっただろうか。 「セクシー」発言が飛び出した記者会見時、石炭火力発電所について問われた小泉大臣は、一言「減らす」とだけ返答した。記者から「どのように?」と問われても、答えることができなかった。  それどころか、小泉大臣のお膝元である横須賀では、石炭火力発電所が建設されているのである。まったくもってセクシーではない話ではないか。
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「もはや新たに石炭を使う余地は地球上のどこにも残されていない」
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