ここでは復元された時系列を示します。トランプ氏主体の時系列で、ヒックス氏の同行についてを記します。とくに注記しない限り、合衆国東部時間(EST)です。
9/25(金)
ヴァージニア州集会(ヒックス氏同行)
9/26(土)
ホワイトハウス・最高裁判事候補者指名式典
ペンシルベニア州大規模集会
9/27(日)
ヴァージニア州でゴルフ
ホワイトハウスで29日の準備 (ヒックス氏同席)
9/28(月)
ホワイトハウスでイベントほか
9/29(火)
オハイオ州 大統領選TV討論会(ヒックス氏同行)
トランプ氏は、取り決められていた入場時の検査を遅刻して行わなかった*。また同じく取り決められていた72時間前の検査も行った形跡がない。
〈*
Chris Wallace: Trump arrived too late to be tested in Ohio before debate, relied on ‘honor system’ 2020/10/02 TheHill〉
9/30(水)
トランプ氏は、朝、迅速検査(ID Now)で陽性だったという未確認情報がある。
ミネソタ州資金協力者集会(ヒックス氏同行)
ミネソタ州大規模集会(ヒックス氏同行)
ヒックス氏は、機内で発症したため隔離、降機は後部階段から。
CNN Smerconish Show*によると、この日ミネソタ州ダルースでの大規模集会では
トランプ氏の演説の時間が通常より大幅に短く、復路の機中でもとても疲れていたなど、既にトランプ氏の様子がかなりおかしかったと指摘されていた。
〈*
CNN.com – Transcripts of SMERCONISH Show 2020/10/03〉
10/1(木)
朝までにヒックス氏の検査陽性がごく限られた人間に伝えられた。おそらくPCR検査。(前日9/30夜には知らされていたとCBSホワイトハウス特派員に指摘されている
* )
ニュージャージーに向かうトランプ氏に随行する人間が何人か引き戻されている。
ニュージャージー州資金協力者集会
トランプ氏は非常に疲れており、明らかに様子がおかしかった。
トランプ氏PCR検査陽性(実は二回目の検査結果で、この日一回目の検査で既に陽性だったという説がある。この場合、一回目は迅速検査であろう。)
10/2(金)
午前中遅くトランプ氏は、高熱を発し血中酸素濃度低下のため酸素補給を行った。
大統領専用ヘリ マリン・ワンにて18時過ぎにウォルター・リード合衆国軍医療センターへ移動、入院。
〈時系列全体の参考資料〉
・
Tracking the White House Coronavirus Outbreak 2020/10/02 The New York Times
・
COVID-19 Exposes Trump’s Sociopathic Side Like Nothing Before It 2020/10/03 Mother Jones
・
Here’s Who Traveled With Trump On Air Force One This Week 2020/10/02 WSJ.com
・
Air Force One: Trump team’s infections raise questions about Covid-19 aboard ‘the flying White House’ 2020/10/03 CNN
トランプ氏とホープ・ヒックス氏の9月25日以降の足取りと検査陽性から発症までの時系列はかなりの程度復元されましたが、不明の点も多々あります。とくに、ホワイトハウスで迅速検査をいつ誰に行って結果はどうであったのか、確定検査であるPCR検査をいつ誰に行い、結果はどうであったのかは、殆ど分かっていません。実は日本時間で2020/10/07現在で、迅速検査もPCR検査もホワイトハウスでは相当以前から殆ど行われていなかったのではないかという指摘が複数あります。
トランプ氏の主治医であるショーン・コンリー氏は、トランプ氏が検査陰性を示した最後の検査がいつであったのか決して明かしません。これは時系列を復元する大きな妨げとなっています。
特に酷いのは、29日
TV討論会の72時間前に行うという取り決めだったPCR検査をトランプ氏は行っていなかったという確信に近い疑惑で、バイデン陣営は文書で回答を求めるべきだとCNNは指摘しています。
ここまででトランプ氏とホープ・ヒックス氏の足取りと検査陽性時期、発症時期はだいたい分かりました。これらの情報からトランプ氏らがいつ何処で感染したのか9月29日のTV討論会では感染可能性はなかったのかなどが明らかになってきます。
COVID-19は、感染(暴露)から発症前後までの時系列がだいたい分かっています。
ウィルス感染から発症までの時系列
感染から発症までに通常4〜6日の潜伏期間を要する
発症24〜48時間前から感染力を持ちPCR検査にも陽性となる、発症前後で感染力は最大となる。無症状感染者の感染力が最大であるとされる理由である
発症後10日程度で感染力は減衰する
PCR検査は、平均17日間陽性を示す
引用元:virology down under
発症日から典型的には
4,5,6日前が感染日で、
感染から48〜72時間はウィルスが少なくPCR検査の不感期間となります。そして、
発症の24〜48時間前から他の人に感染させる力を持ち、
発症日前後が最も感染力が強いとされます。このためCOVID-19は、無症状感染者が強い感染力を示すことになり、この感染症の特徴となっています。
発症後10日程度で感染力は減衰して行き、PCR検査には17日間程度陽性反応を示すとされます。
但し、これらは典型例であって、発症が大きく遅れる場合や、長いこと感染力とPCR反応陽性を持続することもあります。
時系列から、
ヒックス氏は9/30に発症しており、
トランプ氏は9/30〜10/1に発症していると考えられます。
ヒックス氏は9/30夜のPCR検査で、
トランプ氏は10/1夕方のPCR検査で陽性の確定診断がでています。従ってヒックス氏を9/30発症、トランプ氏を10/1発症とここでは定義します。公式には、トランプ氏の発症は10/2とされている様です。
この場合、多くは暴露=感染日として疑わしいのは4〜6日前ですがそれは、トランプ氏の場合9/26のホワイトハウス・ロースガーデンと屋内で開催された
最高裁判事候補者指名式典と屋内での関連行事が該当します。
9月26日に開催された一連の行事にヒックス氏は、参加していません。従って別の機会に暴露・感染したか、ホワイトハウス東館のスタッフとして待機中に感染した可能性があります。ホープ・ヒックス氏は、トランプオーガナイゼーション社員時代から、トランプ氏に最も近い側近とされ、互いに感染可能性の最も高い人物の1人です。
この最高裁判事候補者指名式典には、200名前後の共和党・政権関係者が参加したのですが、建前上はマスク着用のうえで受付だったものの、受付で
ほぼ全員がマスクを外し、中では「
3密」はもちろんのこと、
握手、ハグ、キス全面解禁と言って良く、ノーマスク、社会的距離無しの無法地帯だったとの証言が多数ありかつ、多数の映像、画像が残されています*。
〈*
トランプ氏や側近ら、ホワイトハウスのイベントで集団感染か 2020/10/04 BBC、
Inside the White House Event Now Under Covid-19 Scrutiny 2020/10/05 The New York Times〉
ホワイトハウスで開催される共和党関連のイベントは常にこのような状態であり、The Hillのレポーターであり、9月30日エアフォース・ワンでも同行取材したモーガン・チャルファント(Morgan Chalfant)氏は、余りにも感染リスクが高く恐怖を感じたために、土壇場で(受付で?)考えを変えて中に入らずストリーミングで取材をしたと証言しています*。
〈*
Transcripts of CNN New DAY Saturday 2020/10/03/筆者注:スプリプト(文字おこし)では一部抜けていると思われる言葉がある〉
9月26日の式典と集会は、200人前後の規模でしたが、ヒックス氏の感染が発覚した直後から検査陽性者、発症者が相次ぎ、この場で感染したとみられる人が少なくとも11〜14名おり、トランプ氏らとの接触が多く特定不能の人を含めると20名を超える状況にあります。結果、この最高裁判事候補者指名式典と同日の関連する一連のイベントは、
スーパースプレッダ・イベントであるとされています。
ヒックス氏とトランプ夫妻の感染判明後、ホワイトハウスではスタッフのPCR検査陽性が相次ぎ、10/7日にNew York Timesが報じるところでは*既に24人の感染が判明しています。自己検疫中の人間も多数に及び、まるで
幽霊屋敷だと言われる始末です。CNNなどが報じるところでは、ホワイトスタッフ職員はたいへんにおびえており、ようやくマスク着用と社会的距離の確保が始まりましたが、今週に入りトランプ氏が戻ってきて以降、あまり上手くいっていないようです。それでもホワイトハウスでは、業務再開を目指して完全防備の職員による全館消毒がなされ、その様が「
まるでゴーストバスターズだ」と言われる始末です。
〈*
Tracking the White House Coronavirus Outbreak 2020/10/07 The New York Times〉
このローズガーデンと屋内における最高裁判事候補者指名式典および関連イベントで感染しその後発病した人たちは、暴露後2〜3日程度は感染力を持ちませんのでこの人達が他の人に移すのは翌週9月29日から10月1日以降となります。またPCR検査で陽性を示し始めるのも同期間で、ホワイトハウスの迅速検査装置ID Nowで陽性を示すのも10月1日以降頃と考えられます。実際、ホワイトハウスでは、9月26日式典後の二次感染と思われる事例もみられ始めています。
9月26日のローズガーデンとホワイトハウス屋内でのイベントは、その実態とその後の感染拡大から明らかに
スーパースプレッダ・イベントであり、参加者の中にスーパースプレッダが存在したことは確実です。このため接触者追跡が極めて重要な鍵となりますが、
ホワイトハウスは接触者追跡を満足に行っておらず、CDC(合衆国疾病予防管理センター)へも情報を提供していないことが報じられています*。これは、すでにホワイトハウス・メディカルユニット(WHMU)の能力が飽和してしまい、そのうえ現在の秘密主義が原因であろうと見られています。
〈*
White House Hasn’t Asked CDC Investigators for Covid-19 Case Tracking Help 2020/10/05 WSJ、
White House Is Not Contact Tracing ‘Super-Spreader’ Trump Rose Garden Event 2020/10/05 The New York Times〉
これは大変に憂慮されることですが、ホワイトハウスは内部が混乱し、機能を失いつつありかつ、
トランプ氏が退院してきたことによって反科学主義が再度支配するようになっているのではないでしょうか。その一方で感染者は、最高幹部からハウスキーパーさんまで分け隔てなく日毎増える一方で、内部は映画『
バイオハザード』の様相を深めています。
世界最強の科学力と経済力と軍事力を持つ国の中枢が疫病で機能を半ば失い、
地球を一撃で焼き尽くせるだけの核の鍵を持つ合衆国唯一の人間が、疫病の為か奇行が目立つという現状は、極めて危険と言うほかありません。不思議なことにペンス副大統領が感染せずピンピンしていますので、せめてフットボール(核の鍵)の権限委譲くらいして欲しいというのが筆者の願いです。ただ、
ガッチガッチの宗教保守であるペンス氏は、アルマゲドンを起こしそうでちょっと怖いです。