人為的に進む温暖化。止めるカギは、土壌と樹木を大切にすることにあった

海洋はすでに限界だが、陸地はまだまだ二酸化炭素を吸収できる

海洋イメージ 現在の地球温暖化自体を信じたがらない人には、「温暖化も寒冷化もそれほどではなかった」と思いたがる人たちが多いように感じる。地球は、実際はもっとダイナミックに変動してきたのだ。  例えば地球は、他の太陽系の惑星と際立って違っている。海洋があり、緑があり、酸素が豊富に存在する大気で、二酸化炭素量が極めて少ない。この大気の組成自体のおかげで、生物が生み出された。  大気中の二酸化炭素は植物に吸われ、光合成によって生まれた高濃度の酸素で大気は満たされた。酸素がふんだんに生まれたことから、太陽の紫外線と反応してオゾンとなった。オゾン自体は生命にとっては有害だが、高層大気に広がっていって有害な紫外線から生命体を保護した。  この連なりの中に私たちの生命はある。そこでもう一度、現在の地球温暖化の問題を振り返ってみよう。今の地球上で起きている異常気象の問題は、化石燃料の使いすぎによる二酸化炭素放出量の増加で説明がつく。 海と陸イメージ 二酸化炭素の大気中の滞留が問題なのだから、それを吸収してもらうのは海洋と陸地しかない。しかし海洋はすでに、場所によっては二酸化炭素の吸収過剰によって海水が酸化している。酸化した海水が貝など甲殻類の殻を溶かし始めてしまっているのだ。これ以上、二酸化炭素を吸収することはできない。そこで残るのは陸地だけなのだ。  陸地の微生物は、炭素をまだまだ吸収できる。陸上の樹木と共生しながら土壌をつくれるのだ。それが大気中に増やしすぎた二酸化炭素にとって安住の地なら、その妨げになることだけはやめよう。森林を利益のために燃やしたり、農業生産のために土壌微生物を殺したり、痛めつけたりするのはやめよう。

土壌と樹木の共生関係を学べば、もっと早く解決策が見つかる

土と樹木イメージ そもそも「土壌」という言葉自体に、生物と植物が共生しているという意味が込められている。他の惑星のように生命のいないところは「土」しかなく、豊かな「土壌」は生めないのだ。  地球はヒトという単一の種のせいで、育ってきた大気も土も壊されようとしている。その解決策は「土壌と樹木」にしかないのだから、もっと気をつけて扱わなければならない。大切なのは土壌を作り上げた樹木と微生物との共生関係だ。  それを壊すような開発も農法もやめよう。共生関係を学べば、もっと簡単に解決策は見つかるはずだ。二酸化炭素を排出することで金儲けをしている人たちは、確かに最低だ。利益に目がくらんでいる人たちをまともに覚醒させようと努力するよりも、もっとできることはたくさんある。 「土地と樹木と微生物のために」汗を流すほうが有益だとは思わないか。少なくともそれらのために努力することのほうが、ずっと気持ちよく働けるではないか。 【「第三の道」はあるか 第5回】 <文/田中優>
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『放射能下の日本で暮らすには? 食の安全対策から、がれき処理問題まで』(筑摩書房)『地宝論 地球を救う地域の知恵』(子どもの未来社)など多数
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