全国各地を巡る旅慣れたトラックドライバーは、なぜ「各地方の名店」を教えられないのか

答えられないもう一つの理由は??

 そしてもう一つの理由が、これである。 2.教えたくない  トラックドライバーの答えにもう1つ多いのは、「名店は知ってはいるが教えたくない」というものだ。  上記のような駐車場不足という問題はあれど、長距離を走るだけあって、名店を「1つも知らない」というわけではない。先述通り、食にこだわりを持つ人が多いトラックドライバーには、やはり「自分の名店」を持つ人が多い。  が、そこを「人には教えたくない」とするドライバーが非常に多く、今回のアンケートで店を紹介してくれた中にも、「口外禁止でお願いします」や、「本当は教えたくないんだけど」という断りや躊躇心を添えるケースが目立った。  彼らが名店を教えたくない理由は、「店に行けなくなるから」だ。  せっかく見つけた「トラックでも通える名店」。そこを紹介することによって客が増え、トラックを停めにくくなれば、自分で自分の首を絞めることになる。  「名店を人に教えたくない」は、トラックドライバーでなくても働く心理ではあるが、彼らの場合は前出の駐車スペースの問題から、それに輪を掛けて教えたくないのである。

「教えたくない理由」もトラックドライバーならでは

 「もとはトラックドライバーのためにとやっていたお店が、テレビで紹介されて観光客が倍増し、トラックが入りにくくなってしまうお店を多々知ってます。行けなくなったら寂しいもん」(40代長距離中型)  「店を教えることで客が増えれば食事が出てくるスピードも遅くなるし、トラックを停めることもできなくなる。路駐するトラックが増えれば結果的に店に迷惑を掛けてしまう」(50代長距離大型)  全国を走る彼らが知る名店はホンモノで、実際紹介すると一気に客が増える。  筆者自身、今回トラックドライバーたちから寄せられた各地の「名店」をここで紹介したいところではあるが、彼らが選ぶ「名店」には、必然的にトラックが停められる場所があることが分かっている以上、残念ではあるが、やはり今回も「釣れない答え」しか出せないのである。 <取材・文・写真/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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