児童が保護されたHOHの施設(栃木県那須町)
2004年、児童相談所が那須町のHOH施設から児童5人を保護した。「
不適切な養育環境」にあったことが理由だ。当時の報道や元メンバーの証言によると、幼児が段ボールに入れて放置されていたり、就学年齢の児童が学校に通わされていない状態だったりしたという。
「那須町の施設には子供もおり、大人たちが“セミナー”の一環として部屋の中で怒鳴ったり泣き叫んだりしている中で放置されていたんです。大人と一緒に“セミナー”に参加させられていた子供もいました」
この頃、TOSHIは全国でドサ回りのコンサートを行い、その売上をHOHに納めるという役回りだった。
「TOSHIは、ボランティアと称して福祉施設などを1日で何件もハシゴしてライブを行い、CDの即売で得た売上やお車代を、次の会場に向かう途中でATMからHOHに送金していました。TOSHIもセミナーに参加することがありましたが、HOHの施設はMASAYA氏以外の男性は立ち入れない決まりだったので、TOSHIは玄関の土間にひれ伏して受講させられていました」(元メンバー)
児童虐待疑惑が大きく報じられた2004年以降、HOHを辞めた元メンバーたちがHOHを相手に訴訟を起こした。セミナー料金やリゾート会員権代金の返還を求めるもので、中には半年で約1380万円を奪われた(慰謝料等を含めて訴額は約2000万円)元メンバーもいた。この元メンバーが起こした訴訟については、2007年に東京地裁が約1500万円の損害賠償を認める判決を言い渡したが、HOH側が控訴し、さらに裁判が続いた。
TOSHIも含めHOH側が被害者や被害者側の代理人弁護士を中傷する情報発信を繰り返したため、被害者側の弁護士が名誉毀損を理由にHOH側を訴えたり、逆にHOH側が被害者側の弁護士を訴えるなど、のべ10件の訴訟が飛び交った。HOH側は、被害者側弁護士の懲戒処分も弁護士会に申し立てた。
被害者の代理人・紀藤正樹弁護士らと共同記者会見するTOSHI
泥沼の訴訟合戦だったが、2010年に事態が急転した。
TOSHIがHOHからの脱会を表明し、記者会見を開いたのだ。さらに後日、TOSHIはHOH被害者や被害者側弁護士と共同記者会見も開いた。
TOSHIは会見でHOHに10億円以上を貢いできたことなどを明かし、自己破産を申し立てた。最大の「ドル箱」を失ったHOHは、被害者らに慰謝料と損害賠償にあたる和解金を支払う内容で和解を提案。被害者側が受け入れ、関連する全ての裁判が終結した。
しかし破産したのは、広告塔だったTOSHIだけ。
HOHといくつもの関連会社は、社名を変え、いまも活動を続けている。MASAYA氏自身も現在はMARTHと名乗っている。
HOHの被害者団体も、当初は「HOHとTOSHI問題を考える会」だったが、TOSHIの脱会を受け「
MASAYA・MARTHこと倉渕透グループ問題を考える会」(以下、考える会)に改めた。
「TOSHIがいた頃のHOHでは20人強のコアメンバーが那須で共同生活をしていました。現在は拠点を神戸や芦屋に移して、おそらく10数名程度が拠点施設周辺に住んでいる形です。たとえば株式会社ヒーリング(旧、株式会社倉渕コーポレーション)という会社では、足を乗せて使う数十万円の岩盤浴器具を漢方薬局などに売り込んでいます。店頭でそれを使う客にMARTHを紹介するといった勧誘が行われています。MARTH(MASAYA)は現在もセミナーのようなこともしています」(考える会関係者)
屋久島に建設予定だとうたうリゾートやプライベートジェット、クルーザーなどの会員権も各々数百万円で販売する。こうしたリゾート事業も、HOH時代から行われていたものだ。つまり、会社名やMASAYAの芸名を変えても、概ねやっていることは変わらないと言える。