転職が当たり前の昨今ではあるものの、民間企業と違って大学からプロパーでそのまま働いている人の方が多いのが、公務員職の特徴だ。
「残念ながら、公務員の面接では『転職経験の多さ』は非常にマイナスに働きます。根気がないとか、嫌なことがあったらすぐに辞めるんじゃないかという、負のイメージを持つ人が多いです」
ある40代の受験者の体験では、面接時間40分のうちほとんどの話が20代のときの転職についてで、やりたい仕事も志望動機も一切聞かれなかったという人もいるほどだ。
「ただ、転職というと全部マイナスかといわれると、プラスであることもたくさんありますよね。自分のスキルアップや新しいことへのチャレンジ。あといた仕方ない転職、例えば事業の撤退や、結婚や出産などの生活環境の変化などです。ちゃんと納得のいく説明ができるということが必要になってきます」
また「上司が悪かった」「会社の待遇が悪かった」などの、以前いた会社に対しての悪い発言は、面接官の心象を悪くする要因だ。
「他責的な言いまわしではなく、合理的な転職の理由をつくっていくことを意識してください」
自分のことを先方にうまくプレゼンできれば、面接官の転職に対するマイナスイメージも払拭できるはずだという。
部署が決まったらその部署にずっといる印象が強い公務員だが、行政の中での異動は意外に多い。
「国家公務員だと1年ぐらいで異動。自治体でも2~3年で異動です。いろんな部署で新しい仕事にチャレンジしないといけないので、それなりのヒューマンスキルが求められます」
コミュニケーションスキル、対人的な調整、交渉スキル、新しいことに意欲的であるなどのスキルだ。
「あとはこの人を採用したら、ここで活躍できるかもしれないという、今の行政組織にはない経験スキルがあるかどうかも求められます。いわゆる自分の武器を持っている人はすごく貴重です」
マーケティングで事業企画をやっていた人、営業でも技術職でも産学連携をやっていた人など、あらゆる分野で培ったものを武器にして活躍している人材はいると安達氏はいう。自分がこれまでやってきたことが行政機関の中でうまくマッチングできれば、安定した公務員生活も夢ではないのだ。
【安達瑠依子氏】
公務員面接試験指導を専門とする講師。特に社会人経験者や既卒の面接対策を得意とし、2018年より『公務員面接の達人』を監修。民間企業数社の人事部長を経て、評価制度や採用の人事コンサルタントに転身後、2012年、首都圏の自治体の面接官を経験。その経験を契機に、公務員試験における面接対策のセミナー、個人指導、面接対策プログラムの開発に従事。
<取材・文/武馬怜子(清談社)>