ここで
Appleが公開している本邦の移動傾向をみると、5月連休以降一貫して増加していますが、7月の4連休で特異的に減少したもののその後は増加が継続し、
9/19-22のシルバ−ウィークに驚くほど激増しています。これは
事実に背を向け続けてきた日本政府の責任以外の何物でもありません。
この
移動傾向の増加は、感染拡大の目安となります。ちょうど良い例が、欧州で先行しています。経済再開とバカンスが第二波パンデミックの切っ掛けと指摘されるフランス、スペインと本邦の外食GOTOに類似した外食半額政策*や経済再開を積極的に推奨した英国について移動傾向と新規感染者数の推移をみてゆきます。
〈*
外食を50%割引、付加価値税は5%に減税 英財務相が経済刺激策を発表 2020/07/09 BBC〉
Appleが公開しているフランスにおける1/13以降移動傾向(モビリティ)の推移
Appleが公開しているスペインにおける1/13以降移動傾向(モビリティ)の推移
移動傾向が基準点(1/13の値)を超えた時点に注目すると、6月に基準点を超過したフランスとスペインでは7月から第二波が、7月に基準点を超えた英国では8月から第二波が大きく立ち上がっています。
本邦では、6月に移動傾向が基準点を超えましたが超え方は顕著でなくなだらかに増加した後、7月4連休における移動傾向の落ち込みも目立ち、結果として7月に立ち上がった第二波を8月から収束に向かわせました。移動傾向は8月中旬以降も+20%程度で安定し、
9月に入って以降は一貫して増加傾向となりました。そして
9月シルバーウィークで移動傾向が鋭く立ち上がっています。シルバーウィーク中に
自動車、公共交通機関が基準値の二倍に達し、
徒歩も大きく増加したことは特筆すべき事です。
これは10月初旬から本邦における第三波の立ち上がりの可能性を強く示唆しています。
こういった現象が新規感染者数の推移に表れるのは、14日後頃であり、これは10/4が目安となります。但し、これは筆者が8月末から9月第二週の間の本邦統計を精査していて深刻に感じたのですが、本邦統計は、
遡及しての上方修正が日常的に行われており、特に
速報値発表後2週間は日常的に大幅な上方修正が黙って行われています*。筆者はこれをサイレント修正と呼称しています。従って、
速報値は目安にすることすら危ない代物です。パンデミックとの闘いでは統計は地図と羅針盤に相当するもので極めて重要ですが、本邦ではこの統計に大きな欠陥があります。なお、本邦統計が安定するのは発表から2ヶ月後です。それまでは大小のサイレント上方修正が日常的に行われています。
〈*「速報値であるため後日修正される」と断りはあるが、黙って修正して良い程度を超えた上方修正が行われている〉
この本邦統計の欠陥については、Twitterで
MAKIRINTARO(@MAKIRIN1230)氏が根気よく東京都の発表する統計を監視してきた結果発見し、
指摘されています。 同氏は、更に独自に東京都統計の修復と更新を毎日行われています。筆者は基本的に本邦の統計はMAKIRINTARO(@MAKIRIN1230)氏により更新されたものと海外機関発表(ジョンホプキンス大学や欧州CDC、ロスアラモス国立研究所など)を採用しています。
本邦旧帝国を代表に統計が駄目な
国または政権は必ず市民を巻き添えにして滅びます。ソ連邦も統計が政治的圧力で崩壊し、国も滅びましたが、原簿は官僚機構によって大切に保全されてきており、グラースノスチ政策後は、本邦ほか海外研究者も加わり直ちに統計復元と評価が行われました*。ロシアでは現在も行われている半世紀以上前に処刑などされた政治犯の名誉回復は、原簿が破壊されていなかった為に可能となっています。本邦は、
原簿すら破壊してしまう、原簿の信頼性が低い、原簿を捏造することで際立ち、根本的に異質です。実は80年代末頃、本邦の統計は旧帝国の失敗への反省から世界でも際立って優れたものになったとされてきましたが、
僅か30年で旧帝国並みの欠陥統計国家に戻ってしまっています。
〈*
ソ連経済と統計 島村史郎編著 1989年8月1日 東洋経済新報社
いずれにせよシルバーウィークの結果は10月上旬に統計へ表れます。筆者は慎重に監視を続けています。
ここまで、本邦と欧州の5月以降の実態を比較してきましたが、本邦の実態は、謎々効果と高いマスク着用率、市民の自粛、学校閉鎖以外はほぼノーガードと言う状態で、国や保健当局の姿はそこにありません。これが本邦の世界的に際立った特徴です。
9月に入り所謂「コロナ疲れ」で市民の努力は効力を失った状態で、それがシルバーウィークの移動傾向に現れています。このコロナ疲れは、籠城ウェルカムの筆者には全く理解できませんが、全世界的に見られる傾向で、市民が批判される筋合いはありません。
また学校も大学以外は再開しており、世界唯一と言える国策による検査抑制と相まって子供達をウィルスの運び屋としている可能性が強く疑われます。
移動傾向の推移ほか本邦の統計を見る限り、9月に始まった「秋の波」は、10月になると急激に立ち上がる可能性があり、厳戒を要します。
今回はこれまでとして、次回は欧州、大洋州と本邦を比較し、更に分析を進めます。そして、パンデミック予測の紹介を始めることとします。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ24:統計と予測編2
<文/牧田寛>
Twitter ID:
@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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