毅然とBLM支持を示した大坂なおみ選手への日本特有の批判。大坂世代の若者はどう見たか?

同世代からは肯定的な声

 大坂なおみ選手と同世代の人々は、政治的発言も堂々と主張し、BLM支持を毅然と表明する彼女のことをどう見ているのだろうか? 筆者の友人十数名にインタビューを行ってみると、そこから浮かび上がってきたのは、彼女のことを「誇らしく思う」という肯定的な結果だった。  筆者が友人たちに「『スポーツ選手が政治的な意見を言うな』という声についてどう思うか」という質問をしたところ、「どんな職業にせよ、何らかの声を上げることを妨げる行為には反対。政治を一部の職業の人のみのものとすることとイコールであり、民主主義に反し自らの首を絞めている行為」「一人の人間が政治的な意見を表明するのに、肩書きは関係ない」「スポーツ選手はスポーツに集中すべきであって、政治に口を出すべきではないというのは多様性を認めないということ。大坂なおみ選手に対してもそのように言論を規制するのはおかしい」という声が上がった。  また、「今回の全米オープンで大坂なおみ選手が7試合マスクを着用したことについてどう思うか」という質問をしたところ、「大坂なおみ選手が『スポーツ選手』であるから、スポーツをしている時が最も政治的に訴える機会にもなるのだろう。大坂なおみ選手は、スポーツを通してスポーツ以外のことも訴えたいと思っているように思う。それは スポーツの比較的にみて新しい姿であり、とても良いと思う」「試合は開催元や観客のものでもあるけど、第一に選手のものであると思うので、自己責任で社会問題を持ち込む行動に周りはとやかく言えないと思う。選手も命がけで大会に向けて練習してきて、結果を残す為に必死な世界大会でその行動は並大抵の思いではできないと思う。スポーツ選手の自己表現の場が大会で、表現方法がマスクを着けるってことだっただけだと思う」「事件が起きたときにもそれについては言及していたし、自身の注目度を良い意味で使って世界へ意思を発信していることはとても良いことだと思う。正直そういうのってどの方面からなに言われるかなんてまったくわからないしめちゃくちゃ勇気の要ることだと思うけど、そういうのをこなせる勇気が凄い」という意見が集まった。ここには載せていないが、他の友人からも肯定的な意見が寄せられた。

「今何を食べたいか」という質問は「くだらない」

 また、先ほど申し上げた「日本のスポンサーやメディアによって作り上げられた大坂なおみ」についても気になったため、「日本のメディアが大坂なおみを過剰に『ステレオタイプの日本人』として扱いたがったり、記者が度々『今何を食べたいか』という質問をすることについてどう思うか」という質問をしてみた。すると、「都合の良いときだけ国民意識を求めるのは気持ち悪い。大坂さんであれ誰であれ、女性アスリートへのそういった質問は、馬鹿な女の子扱いしているように見えるのでやめたほうが良い」「メディアの質が低いなと思う。彼女のパーソナリティを引き出すにしても、他の質問があるのではないか」「くだらないなと思う。彼女の部分的な側面を切り取って、キャラクター化しようとする意図を感じる」という意見が集まった。  今回は筆者の周りの20代十数名にしかインタビューをしていないため、これが同世代の総意だという気はさらさらない。しかしながら少なくとも筆者の周りでは彼女が社会問題に対するメッセージを発信することには肯定的であるし、日本の一部のスポンサーやメディアが彼女を型に嵌めるような質問をすることに対しては否定的であった。大坂なおみ選手自身は批判の声すらも「刺激になった」とツイートし、その強さには驚かされるばかりであるが、「あなたを支持する同世代はたくさんいる」ということもどうか伝わってほしい、と思う。 <取材・文/火野雪穂>
97年生まれのライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。
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