この自作レベルの潜水艦でブラジルからポルトガル沖まで航海したというからある意味すごい
(Photo by Marta Vázquez Rodríguez/Europa Press via Getty Images)
ブラジルから6000km自作潜水艦で移動し、麻薬密輸を画策
昨年11月にスペイン・ガリシア地方の沖合で3000キロのコカインを積んだ潜水艦が発見されるという出来事があり、筆者も記事にした〈参照:
「手作りレベル」の潜水艦で7690km航海してコカイン密輸。密売人の執念に呆然〉。
南米ブラジルから7690kmの距離を航海したが積み荷を誰も取りに来ないことから乗船していた3人が証拠隠蔽のために潜水艦を沈めたという事件である。この3人とはエクアドル人が2人とそれまで前科のなかったスペイン人アグスティン・アルバレスの3人であった。
事件発覚当初、治安警察はこの密輸入を計画したのは麻薬組織エル・パステレロかエル・ブッロのどちかであろうと考察していた。この二つの麻薬組織がガリシア地方で勢力を二分しているからである。
ところが、今年4月26日に起きた事件で治安警察は別のものによる犯行ではないかと推察するようになり、捜査の焦点を方向転換させていた。この事件というのはガリシア地方の沖合300マイルの地点でトーゴーの商船旗を掲揚したエル・カラール(El Karar)という船名の不審な船を国家警察と税関管理局が発見ことである。船内で取り調べを行ったところ4000キロのコカインが検出されたのであった。乗組員はバングラデシュの8人、ネパールの6人、それにガリシア出身者がひとり乗船していたという。〈参照:「
El Pais」、「
El Pais」〉
この同じ日に、ガリシア地方の最大の入江に位置するアロウサ地域で国家警察が一斉検挙を行い28人を逮捕。逮捕された者の多くがサントルム一家に関係しているということが判明。警察が一斉検挙したエル・カラールの乗組員とサントルム一家の交信を盗聴した結果、昨年11月に起きた潜水艦によるコカインの密輸入にもこの一家が関与していたことが判明したというわけであった。
それで治安警察は捜査の対象をサントルム一家に絞り、そのリーダーであるファン・カルロス・サントルムを指名手配した。逃亡した彼がフェイスブックを開設し、スペイン紙『
El País』との通話を受け入れた。その会話の中で彼はエル・カラールと潜水艦によるコカインの密輸入に関与していないと述べ、警察とガリシアの強大な麻薬組織がグルになって仕掛けた罠だと指摘した。
果たしてこの指摘は本当なのか? サントルムも、一家そのものが強力な影響力をもっていると警察は見ている。実際、1996年にも、この一家の一員であるホセ・サントルム・ビーニャス(俗名エルペッロ)は1100キロのコカインを密輸入させようとしたことで逮捕されている。それ以後、彼の兄弟らも同じような犯行を犯して来たのである。ただ、ファン・カルロス・サントルムが同紙との会話の中で言うには、サントルムという苗字をもつだけで最初から麻薬に関係している人物だと結び付けられている、ということなのだそうだ。