失速するれいわ新選組。映画監督・原一男氏が山本太郎に覚えた違和感

1年前のれいわ新選組と、現在との変化

――それはメディアには初めて話される内容かと思うのですが、周囲の方にはある程度伝わってはいたのでしょうか。  作品を見た人からは、内容的に山本太郎を貶めるものでもないのに、なぜ山本太郎のインタビューがないのかと問われます。私のTwitterに直接聞きに来る人もいる。また、山本太郎だけがれいわ新選組のメンバーの中で、SNSのアカウントで『れいわ一揆』に関して一切触れてないことも気になりましたと。みんな薄々勘づいている。これは映画の本筋とはずれていく話だし、党を貶めたいわけでもありませんから、自分たちからはなるべく話さないようにしていました。ただ、映画の本公開も近づいて、「なんとなく」な違和感が、少なからず人に伝わっていくようになったと思います。  それには、山本さんの変節もありますね。党としての混乱もそうですけど、ひとつには、去年の参議院選挙について、なるべく話したくなさそうな感じがあって、かつ、否定するような発言もしている。しかし、参議院選挙におけるれいわ新選組の功績は、言うまでもなく大きかったですし、本人がそれを自覚できておらず、かつ、そうした過去を振り切ろうとしているのはまずい気がする。
(C)風狂映画舎

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 また、人を軽視するようになったという感じはします。都知事選の際に、ラジオに山本さんが出たんですね。ラジオ局のまわりを、(山本さん目当てで)たくさん記者が囲んでいるとパーソナリティが指摘したら、山本さんが「あれはハトです」と言ったんです。彼らはパンくずを食べにくるハトで、僕はパンくずをまいているんですと続けられたんですが、これには大きな違和感を覚えました。  メディアは政治家にとって、自分たちの活動を広めるうえで欠かせない存在ですし、自分の周りに誰がいて誰が支えてくれているかという視点が抜けている印象は否めない。また最近の番組で、自分に対して批判的な意見はダークサイドと言って、私たちもダークサイドと言われているのかとは思いましたし、異なった他者に対して、より不寛容になっているようにも思えます。 ――じっさい、映画を改めて見直しても、いまとはちょっと隔世の感があるように思えます。ただ逆説的に、当時の熱狂をいまになって冷静な目で見直せるということはありますね。  そうですね。私はいままで、政治を題材にした作品を撮ってみたいという気持ちはあったんですけど、ただ、あれは撮ってはいけないとか、あれは落としてくれとか、予期しないところでのいちゃもんがつきそうだということで、なんとなく避けていたんです。それが安冨さんとの出会いで、ひょんなことから撮ることになった。その時点で山本太郎の今までの歩みに詳しいわけでもなかったですし、ほとんど素人同然なままで、カメラを回し始めた感じでした。  再三となりますが、山本さんを含め、候補者たちの顔ぶれは撮影をしているときは絶妙だなと思っていました。個々のスピーチも私にとってはものすごく新鮮で刺激的で、いい機会をもらったなと。そののりで完成まで突っ走ったんですよ。映画自体は、れいわ新選組の可能性を本当に信じて撮りました。1年後にこんなことになって、手前みそですけど、逆に価値が高まったところもあるかもしれません。

れいわ新選組、今後の展望は

――れいわ新選組の今後の展望については、どう思われますでしょうか。  正直、期待はできないですね。それよりは、れいわ新選組に心を動かされた人、一人ひとりが何に心を惹かれたのかということを振り返るべきだと思います。  「れいわ一揆」というタイトルですが、これはれいわ新選組の一揆ということではないんです。去年のれいわ新選組が行ったような、パフォーマンスのような明るい選挙はひとつの理想ではあると思うので、ほかの政党や候補者でもああいうやり方をできる人がいれば続ければいいと思うし、より広い文脈でタイトルをつけたつもりです。山本さん以外の各候補者の皆さんは、私が見る限りは、去年の自分と応援してくれた人たちを裏切りたくないという気持ちが強くて、それを支えに頑張っている感じではあります。それだけに、れいわ新選組という政党を応援するというよりかは、去年の候補者の方たちに最後まで頑張ってほしいという気持ちのほうが強いですね。 ――ちなみに、原監督自身は選挙に出たいとは思われますか。  あと50年早ければ、出馬したかもしれません。候補者である自分自身にカメラを回して、自分自身の視点から「選挙」をとらえるような映画ですね。ただ、今はそういう映画が増えたから、はやりには乗りたくない(笑)。 <取材・文/若林良> <撮影/八杉和興>
1990年生まれ。映画批評/ライター。ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集委員。「DANRO」「週刊現代」「週刊朝日」「ヱクリヲ」「STUDIO VOICE」などに執筆。批評やクリエイターへのインタビューを中心に行うかたわら、東京ドキュメンタリー映画祭の運営にも参画する。
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